2005.12.10
孤独感の恐ろしさ
私はこのシルバーヴィラ向山での生活25年目を迎えました。
病める家内と共に12年、家内を見送って一人になってからも12年が経過して、私も80才に到達し、
これからは真の老後を送るわけです。
入居の時からこのことは「想定内」で、シルバーヴィラ向山を選んで入居したのです。
入居の時に「この人なら……」と見込んで身柄を預けることにした岩城祐子先生は期待通りの方でしたし、
現在の社長、岩城隆就氏を初めスタッフの方々にも本当にお世話になりました。
とても幸せな24年間だったと思います。
「想定内」で毎日を送って来られたので、これまで何の不満もなく、健康的にも恵まれて自由、気ままな
老後が送れる筈でした。
ところがこの一二年、どうも体調が優れないのです。
一番の基本となるのが「おなか」の調子で、これが定まらないために外出がし難く、つい閉じこもりがち
になるので、足が衰えて来るという悪循環になるのです。
私は大の医者嫌いですから、検査を受けたり、万が一手術が必要などと云われたら死んだ方がましなので、
病院へは行かず、「年のせいだろう」と薬を飲んだり、お酒や食べ物の量や摂る時間を工夫していますが、
中々良くなりません。しかし悪くなる一方ではなく、良くなっては又悪くなる繰り返しです。
増田さんには何でも打ち明けて相談していますが、中々結論が出ませんでした。
最近になって二人の意見が一致しました。
「これはストレスから来るものに違いない」ということです。
親しい友人達と会食をして楽しんだ後、一週間程は決まって調子が良くなり、その後また悪くなる繰り返
しだからです。
日常生活のストレスとは何か?考えて見ました。
ズバリ孤独感であることに気付きました。
話し合える友人は増田さんだけで、増田さんとは週に一二度は会う機会がありますが、
それ以外は毎日一人だけの生活です。
前にはスター列伝でご紹介したような愉快な仲間たちがいました。
毎日朝食後、ロビーで30分ほど頓知のYさんを中心に可愛いミッチャンやちょっとエッチなFさん達と
その日の話題や駄洒落など賑やかに交わしてから自室へ戻り、時には用事にかこつけて事務所へ立ち寄り、
センム(現在の社長)や小松さんたちと冗談を言ったりするのがストレス解消に役立ったのです。
今は入居者の構成が変わりました。
「お分かりにならない方々」(認知症の方々)の構成比率が高くなったのです。
愉快な仲間たちが一人減り、二人減り、とうとう私一人になってしまいましたが、その代わりに新規に
入居する方々の殆どが「お分かりにならない方々」なのです。
今ではロビーはこの方々で満ち溢れ、事務所さえも「お分かりにならない方々」に占拠されていて、
私などはロビーへ降りて行くのも憚れます。
従って仕方なく自室に閉じこもることになり、底知れぬ孤独感にさいなまれるようになってしまいました。
「お分かりにならない方々」とうまく共存して行くには、我々健常者(のつもり)の比率が低くなり過ぎ
ました。今やシルバーヴィラは「お分かりにならない方々」のための施設になってしまい、高齢者専用の
長期滞在型ホテルではなくなってしまいました。
これが「おなか」の不調の原因に違いありません。
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