2005.10.16
阪神電鉄とTBS



                                                                      島 健二


半年前にライブドア社がニッポン放送社の株式の買占めからフジテレビ社との業務提携を申 し入れたことが

大騒ぎとなり、このときにはフジテレビ側が四苦八苦の末に、ソフトバンク・ インベストメント社の力を借

りて、ライブドア社堀江社長の矛先を何とか鈍らせ、ニッポン放送社株式の買戻しと形式的な業務提携の形を

取ることによって和解に持ち込みましたが、ライブドア社によるニッポン放送社の防衛的新株発行予約権差し

止め請求訴訟は、一審、二審ともライブドア社勝訴となり、株式取得によるM&Aの防衛が非常に難しいこと

が浮き彫りにされると共に、ホリエモン氏の名前は大いに上がり、日本にもいよいよM&Aの時代が到来した

ことが喧伝されました。



今回の村上ファンド社の阪神電鉄社株式の大量取得による村上氏の阪神電鉄社への申し入れは、

これは敵対的M&Aではなく、優良資産を持つ阪神電鉄社の企業価値向上へ向けた具体策を協議する共同の

作業チームを設け、阪神百貨店、甲子園球場などの土地について証券化などの手法を含めた活用策を検討し、

また阪神タイガース球団の株式を上場することの是非をファンの意見を聞いてみるべきだとするもので、

まだ結論は出ないが賛否両論が出て大騒ぎとなっています。



この騒ぎに続いて追いかけるように登場したのが、

電子商取引最大手の楽天社がTBS社株式15.46%を取得して筆頭株主となり、

TBS社に対して、共同持株会社の設立による経営統合を申し入れたというニュースです。

記者会見をした楽天社三木谷社長は、

「経営統合により、日本初の世界に通用するメディアグループを目指す」としています。

これに対してTBS社井上社長は記者会見して、

「唐突な印象を受ける。慎重に対応を検討するが、協議を始めたわけではない」

と経営統合に消極的な姿勢を示している。


さらに、村上ファンド社もTBS社株式を9月末日現在で7.45%取得していることを表明しており、

村上氏はTBS社に対して横浜ベイスターズ球団の売却を提案しており、

楽天社の東北楽天ゴールデンイーグルス球団所有との関連、またライブドア社が広島カープ球団の買収に

意欲を示しているとする一部報道もあり、再びプロ野球界再編の動きに発展するか、また村上ファンド社

と楽天社とがTBS社問題に関して連携に出るか、色々と波及が考えられる状況です。


今回の阪神電鉄社と村上ファンド社、TBS社と楽天社の問題について、今春のフジテレビ・ライブドア

騒動に何を学んだかを観察すると、仕掛けられた阪神電鉄社、TBS社側は依然として拒否的、消極的で

あるのに対して、仕掛けた村上ファンド社、楽天社側は、積極的でありながら学習した結果を踏まえてか、

敵対的色彩を極力なくして友好的提案であることを強調しています。

三木谷氏は、ホリエモン氏とは対照的に、行動が紳士的であると旧体制の政財界のお偉方に受けが良いと

いわれており、そのせいかまたは学習の結果か、

麻生総務相などは「株主は企業を選べるが、上場された企業は株主を選べない」と発言しており、

また財界の諸井氏も楽天社提案に対して「良い提案ではないか」と発言した由で、提案側にとって追い風

のように感じられます。

ナベツネ氏などは旧態依然のようですが…。

今後の展開が注目されます。
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