2005.8.18
刺客


                                                               島 健二


小泉首相は郵政民営化法案の成立を急ぎ、通常国会内に通過させようとして、

かなりの修正を加えて妥協を繰り返し、わずか5票差で衆議院を通過させました。

反対派は参議院では絶対に否決して情勢を逆転して、廃案としようと意気込んで結束を

固め、結局参議院では関連法案は否決されました。


首相はもし参議院で否決された場合には、内閣不信任と解釈して衆議院を解散する旨を

匂わせて脅しをかけたのに対して、

反対派は参議院で否決された場合に衆議院を解散するのは「江戸の敵を長崎で討つよう

なもので筋違いだ」とし、まさか解散は行なわれないだろうという見解でいたようですが、

小泉氏は、衆議院解散を断行して選挙戦に突入することとなりました。


首相はさらに、「郵政民営化に反対するのは構造改革そのものに反対することだ」と論理

をすり替えて、「郵政民営化は構造改革の本丸を形成するもので、私が総理総裁になると

きの公約なのだ、それを支持して置きながら今になって否決するのは造反であるので、

守旧派と見做す」として選挙の争点を「郵政民営化賛成」と「反対」とに分けて、

「反対派」には自民党公認を与えず、選挙後も組むことはしないと宣言しました。



反対派は、[今回否決したのは民営化そのものに反対なわけではなく、条文の内容に不備

があるためだとか、郵政民営化よりも優先する年金問題とか外交問題があるからだ]など

と反論しますが、一切耳を貸さないどころか、反対派に対抗する「刺客」を各選挙区に配置

する旨を幹事長に命じて、着々と実施或いは準備を進めています。



反対派の前議員達は自民党を離党してまでという気はなかったようで、

「人を裸にしてほうり出した上に、刺客を送って抹殺しようとするのはえげつない。

従来の自民党はしなかったことだ」とボヤいていますが、

「自民党をぶっ壊すとこれも公約した筈だ」とゆるみません。

小泉氏がそういう覚悟でやるのなら、「刺客」という言葉はえげつないとしても、

対立候補を立てるのは当然のことでしょう。



小泉改革が本物かどうか、着手する順序が正しいか否かは議論があるところと思いますが、

要は政官業癒着を是正しかつ役人天国を打破して「小さな政府」を実現するのが肝要で、

この点において小泉首相の考え方は間違っていないと思います。

今回の成り行きはいささか荒っぽく強引かと思いますが、従来の自民党では色々な利権

との結びつきから、改革を阻む守旧派議員が多くいるために改革は進まないので、

小泉首相もとうとう本腰を入れて自民党をぶっ壊す覚悟を決めたのかと考えます。


いささか乱暴すぎるやり方かも知れませんが、

これが政界再編に繋がって、選挙後には自民党も民主党も「ねじれ現象」を解消して、

自民党の中の改革派と民主党の中の改革派が結びついて、守旧派を排除する、

いわゆる「ガラガラポン」につながって、正しい本物の改革を進めて欲しいものと考えます。



改革を望みながら過激なやり方は好まない日本人には、過激な言葉や手法は用いず、

しかし粛々と弛まず進める改革が必要かと思います。

「刺客」だのという大時代な過激な言葉は用いずに、もう少し仲良しムードを出しながら、

しかし安易な妥協をせずに、政界再編が成ることを期待しています。


細川内閣が出来た時からの12年間の空白を取り戻すチャンスにして欲しいものです。

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