2005.6.16
幻滅させる報道



                                                                島 健二


かつての名大関貴ノ花ー二子山親方の死の報道に伴って、その子である若、貴兄弟横綱

の確執や嫁、姑、故親方の内縁の妻までを巻き込んで遺産相続を巡る争いのような報道

が連日のようにテレビの画面を賑わしています。面白おかしくと云いたいところですが、

私には面白くもおかしくもなく、かえって不愉快です。



報道にも色々な種類があり、事件、事実を正確に迅速に伝えるものから、ある事柄の内

面に入り込んで内幕を覗き見するような暴露ものまで色々とありますが、私はこの暴露

ものが好きではありません。

特にそれまで美しいもの、夢のあるものとされて来た事柄のイメージを壊して抉り込む

ような報道は不愉快に思います。


父親の死を境として、色々な人間関係のしがらみが明るみに出たり、遺産の相続を巡っ

て親子、兄弟、嫁、姑あるいは愛人関係等の争いが繰り広げられるというようなことは

世間によくある構図ですが、こうした家庭の内情に土足で踏み込んで掻き回すような報

道は趣味が良いとは云えないと思います。

殊に美しい思い出として、好ましい美談として大切にしておきたい事例のイメージを損

なうことはやめてほしいと思います。



名大関貴ノ花ー二子山親方とその子の両横綱、若乃花、貴乃花の活躍は、

相撲史に「若貴時代」として一時代を画した美しい事例で、相撲ファンの誰しもが美し

いイメージを保って置きたいものではないでしょうか? 

その気持ちをズタズタにするような今回の出来事はまことに心外ですし、また報道とし

ても出来るだけイメージを損なわないように配慮して取り扱ってほしかったと思います。



殊に孤高の人、誤解されやすい生真面目すぎる貴乃花親方が、社会勉強が足りないジコ

チューな人間に見られるような取り扱いには問題があります。

彼は将来の相撲界にとって大切な人、貴乃花部屋の運営を通じて今後の相撲界を背負っ

て立つ大切な人で、今回の出来事を収拾するためにも様々な配慮をしている筈だと思い

ます。単純に自分の利益のためだけにジコチューに行動しているとは思えません。

本来は無口で、あまり言い訳もせず、黙って耐えているタイプの彼が、今回は饒舌と云

うばかりに積極的に見解を発表しているのは奇異にさえ思われますが、これには何か、

沈黙を守っていれば何を云われるか、何をされるか分からないような危機感を感じてい

るのではないかとさえ感じられます。

報道によりいたずらにイメージが損なわれるマイナスが懸念されます。



今回の事件の報道で、相撲界の美しい一時代「若貴時代」のイメージが幻滅するように

損なわれ、そうでなくても下降気味な相撲人気が更に翳るのを懸念する次第です。


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