2005.5.20
気になる日本語
島 健二
言葉は時代と共に変わるもの、また一時的に乱れをみせても月日の経過と共に元へ
戻る場合もあり、一概に「日本語が乱れている」と騒ぐほどのこともないかも知れ
ませんが、最近の若い世代が使う言葉は、我々老人にはやはり気になります。
かなり抵抗は感じますが、ら抜き言葉にもある程度慣れましたし、
「ア、ホント」「ウッソ」や「ソウナンダ」も容認するわけではありませんが、
諦観の気分でいます。
どうにも我慢ができないのは、謙遜や謙譲に配慮しない傲慢さを持つものの言い方
や、言葉の発生経緯を知らないための間違え方や、敬語や丁寧な言い回しの間違い
などです。次に幾つかの例をご紹介したいと思います。
スポーツ界でインタビューを受けた選手が「感動を与えるプレイをしたい」とかい
う表現をするのが流行っているのが耳に障ります。
これは私の感覚では「おこがましい」限りで、「もってのほか」な思い上がりです。
感動するのは見る側の立場で、真摯にプレーする選手に感動するのであって、選手
の側から押し付けるものではありません。
「思い上がった言い方」と感じてしまいます。
また「・・・せざるを得ない」とか「言わざるを得ない」というような言葉があります。
これらは文語的な言い方が現代の話し言葉に残っている珍しい例と言えましょうが、
言葉の成り立ちを知らない若い世代には、
「・・・せざる・おえない」「いわざる・おえない」と発音する者がいます。
これは言葉の成り立ちを知らないための間違いで、多分「手に負えない」などという
場合と混同しているのでしょう。
この誤りをNHKのアナウンサーも犯していたのにはびっくりしました。
「気になる言葉」というコーナーを担当しているアナウンサーもいることですから
この誤りを取り上げて是正してほしいと思います。
ちょっと古い話になりますが、いつぞや日本テレビの女性キャスターが石原都知事と
の対談の折に、「もののふというのは武士のことなんですねえ、もののけと間違えな
いようにしなきゃあ」とのたまわったのには呆れて物も言えませんでした。
この他、「ご存知ですか?」との問いかけに「ご存知です」はみっともない返事で、
「存じております」が正しいし、「召し上がれ」と云われれば自然に「頂きます」
となりますが、「頂いて下さい」などと云われると何とも不思議な気分になります。
最近気になって仕方がないのは、「お出かけする」とか「お受験」などという言い方、
「出かける」「受験」では丁寧でないのでしょうか?
また、これも耳に障るのは「・・・かなァと思います」という表現。
「ホリエモン事件」の時、堀江氏もソフトバンク・インヴェストメント」の北尾氏も
盛んに使っていました。「・・・かと思います」で十分で、「なァ」がつくと子供っ
ぽいように思います。
コンビニのレジなどで、「5000円からお預かりします」と云うのを耳にしますが、
どうして「から」をつけるのでしょうか?
さらにぼやかしてものを云う例として「・・・とか」が耳障りになります。
何もぼやかす必要もないでしょう。
まァ、「日本語が乱れている」などと問題にするほどのこともないのでしょうが、
明らかな間違いや謙遜、謙譲を忘れた、あるいは傲慢に聞こえるような言い方は正す
べきで、これは「一応正しい物の言い方を知っている」年寄りの役割かと思っています。
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