2005.2.3
「フリーダム」


                                                           島 健二


 ブッシュ大統領の二期目の就任演説は、

「全世界への自由の拡大」を掲げて話題となっています。

この理想主義的な演説に論客たちの評価は支持と反発に割れたと報道されています。



 ブッシュ大統領は「自由を拡大し、圧政を終わらせる」構想の主な対象は、

「拡大中東地域」であることを明らかにし、「拡大中東地域で自由と希望、民主主義を

促進し、テロの素地となる絶望や無力感、怒りを打ち砕こう」と述べ、「これは米国の

使命である」と言い切ったそうです。20分程の演説の中で、大統領は「フリーダム」

(自由)という言葉を力を入れて42回も使ったと報じられましたが、

米国の理想主義がこのようにエスカレートすることは私の不安感を増すばかりです。


近年米国は、米国式民主主義のもと、自由な環境での自由な競争から得られる進歩発展

を続け、驚異的な強大な国力を保持するようになって、名実ともに世界一の強国となっ

ています。この成功に自信を得て、アメリカは同様な環境を創出して行くことを他国に

求めて世界的なものにしようとする理想を追っています。

グローバル化と呼ばれるこの世界均一化は、批判的に見るならばアメリカの価値観、

アメリカン・スタンダードの押し付けに他ならないと云われています。


大統領の演説は、大量破壊兵器が発見されず、大義なき戦争と批判を受け、未だに混乱

が続いているイラク戦争には触れていませんが、フセイン政権の圧政を終焉させたと

是認させる意図も見えていますし、今後も同様な戦争やまたは大規模なテロを誘発させる

危険性を感じます。


私は乏しい経験からですが、アメリカ人は良く言えば積極的な親切な人達、悪く言えば

押し付けがましく、お節介な国民と思っています。

自分達が良いと思ったことを強引に押し付けて来て、押し付けられる側から見れば、

時として迷惑なことがあるように思います。


それぞれの国や地域、民族には、それぞれ固有の歴史や文化や考え方があり、

アメリカの大義や民主主義が絶対的な正義ではないので、押し付けは迷惑であり、

紛争のもとになると思います。


専制政治や独裁政治の圧政から解放されることは望んでも、必ずしも米国式民主主義を

好まない民族もあると思います。

これに宗教が絡むと抵抗は更に増幅され、キリスト教の米国VSイスラム教の中東・アラブ

諸国という対立の図式は益々解決不可能なものとなり、戦争またはテロの温床となって

しまうのではないでしょうか? 


米国式民主主義の押し付けと宗教的な対立は避けなければならないと思いますし、

国連や各国が同意しない単独行動主義による武力介入はすべきではないと信じます。

戦争、人殺しが人類に幸福をもたらすことは決してありません。

キリスト教にせよ、イスラム教にせよ、本旨は人を愛し、救うことであって、

戦争や人殺しは、手段としてでも認めてはならないものではないでしょうか? 


日本としてはアメリカの同盟国であり、また憲法上戦争を放棄している立場から、

アメリカに追随する行動を取らざるを得ない場面が多いと思いますが、

中東・アラブ諸国、イスラム圏諸国に誤解されないよう、紛争に巻き込まれない用心が

肝要で、ブッシュ政権の理想主義のエスカレーションは、このような心配の種が増えた

と云えるのではないでしょうか?
                                                        目次へ