2005.1.1
プロ野球雑記帳C 


                                                                   島 健二

合併と新規参入


昨シーズン終盤近くに、パ・リーグのオリックスと近鉄の合併問題が表明されました。

ライブドア社による近鉄チーム買取の意思表明があったりしましたが、

近鉄オーナーはこれを拒否して、合併を推進し、プロ野球オーナー会議は2005年度

パ・リーグ公式戦は5チームによるリーグ戦を行い、更にはもう一つの合併問題が進行

中であるとして、将来セパ10チームによる1リーグ制を指向することを発表しました。


これに対して選手会側が猛然と反発して、オリックス・近鉄の合併凍結と、2リーグ制

維持を主張し、方針を変えたライブドア社の新規参入申請があり、遅れて楽天社の新規

参入申請も行われ、大揉めに揉めて、ついにプロ野球史上初のストが行われたことは

記憶に新しいところです。

この間の紛争の実体については知る由もありませんが、

1プロ野球ファン・近鉄ファンとして、私の感想を述べさせていただきたいと思います。




オリックス・近鉄の合併問題


過去に、球団の身売り、あるいは球団経営権の譲渡は何度も行われました。

その時の情勢で、経営状態が苦しくなったオーナーが経営権を手放し、時流に乗って勢い

の良い企業がこれに代って経営権を取得するもので、珍しいことではありませんでした。


近鉄が売りに出し、ライブドア社が代って経営権を取得するという単純なオーナー交代が

どうして出来なかったのでしょうか? 


オリックスが近鉄を吸収合併し、パ・リーグを5球団にしてからもう一つの合併を推進し

て、セパ10球団による1リーグ制という図式が出来ていたためと考えられます。


オリックス、西武、それにセ・リーグ巨人等のオーナー達により推進されていたと思われ

るこの図式は、選手会側の猛反発とそれに同調した一般ファン層の大声援により齟齬をき

たしたのではないでしょうか? 

ストにまで発展した結果の妥協として、2リーグ制の維持、1球団補充のために新規参入

球団を認めることとなった結果、オーナー会議による新規参入の資格審査となり、楽天社

の参入を認めて、ライブドア社は排除されました。


どう考えてもオリックスの吸収合併による「始めに先の図式ありき」です。



新規参入問題


ライブドア社と楽天社の新規参入はプロ野球オーナー会議によって審査されましたが、

この2社の経営維持能力にどのような差があったのでしょうか? 

両者とも1部上場銘柄のIT関連企業であり、新規参入意欲・参入した場合の経営上の

創意工夫にも差があるとは思えません。

経常利益等の会計数字に多少楽天社優位があったとされますが、

決定的とは思われませんし、ライブドア社の先発メリット、地元となる宮城県県民の

圧倒的なライブドア社支持も完全に無視されました。

第一、今日の経営不振を招いたプロ野球のオーナー会議に、

新規参入申請者の適否を審査する資格があったのかと問いたくなります。


近鉄オーナーが球団経営権を放棄するのであれば、ライブドア社の申し出があった時に

それに対応すれば、球団数を減らすことなく、経営権の譲渡だけで済み、6球団制も近鉄

チームも維持できたのに、その申し入れに一顧だにしなかったのは、

「始めに上記の図式ありき」を証明するのではないでしょうか?


 
近鉄ファンとして言わせてもらうなら、昭和25年のチーム創設以来、

パ・リーグで、オーナーも代らずに55年間存在し続けた唯一のチームは近鉄です。

従ってチームに対する愛着心は非常に強いものがあるのです。

ここでチームが消滅してしまうのはたまらなく寂しい。

オーナーが代って呼称が代っても、チームが存続してほしかったのです。

オリックスに吸収合併されたオリックス・バッファローズなど応援する気にもなれません。

といって、楽天イーグルスも旧近鉄の分身かも知れませんが半分以下の存在です。

今回の合併は近鉄ファンのチーム存続の夢を打ち砕いてしまったのです。



オリックスのオーナーは現在でもテレビ等で、将来のセパ1リーグ制を標榜しています。

オリックスのオーナーは(旧近鉄のオーナーも)、近鉄ファンの切ない気持ちを踏みに

じったと云えましょう。


10球団、1リーグ制を指向したと思われる各球団のオーナー達は、

たまたま別の不祥事で辞任してオーナー交代となりましたが、

考え方は継承されるのか、あるいは変わるのでしょうか? 

オリックスのオーナーは、前述のように依然として1リーグ制を指向しています。

2リーグ制維持、球界の拡大的発展を目指す選手会とどちらが正しいのでしょうか?



鍵はファン層が握っていると云えるでしょう。

 
またその後ダイエーも経営権を手放すこととなり、譲渡を申し入れた同じくIT関連

業界の雄ソフトバンク社がスンナリと交代を認められました。

結局、排除されたのはライブドア社のみとなって、同情されていますが、どうでしょうか?

莫大な赤字をこうむることなく大いに名前を売ったのはライブドア社ということになる

可能性もあります。

ライブドア社堀江社長は

「2〜3年のうちにはプロ野球チームを持つようになっていますよ」と依然参入の意欲を

強く表明していますが……。                                     
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