2004.10.21
自己主張・自己弁明


                                                              島 健二

10月16日(土)、当シルバーヴィラ向山の年間重要行事、

シルバー・フェスタ・オン・ステージが無事に終了しました。

ご存知ない方々のために説明いたしますと、

今年で6回目を迎えた「平均年齢85才の発表会」と題する、シルバーヴィラ向山、

アプランドル向山、土支田創生苑入居者を主体出演者とする発表会です。

技術的にも、発表能力的にも粗末な老人達の演芸会に過ぎませんが、

年を取っても、体力的、能力的に不自由になっても、舞台に立って何かをしてみたいと

云うのは誰もが持つ潜在的な欲望らしく、内容的には粗末な発表会であっても、子供の

学芸会のように、お分かりにならない方々を含めて、出演者一同、生き生きとした表情

をしています。


私も第一回から比較的健常者、比較的若手として、ある程度自分に向いた役割を果たすべく、

毎回参加をして自分なりに努力をして来ましたが、今回のフェスタ直前に「参加拒否」の

ような騒ぎを起こしてしまい、ご迷惑をお掛けしてしまいました。

結局は参加して曲りなりに役割を果たしましたが、

他者の評価は知らず、自分としてはやはり「最低の出来」で、フェスタが終わってホッと

した反面、自己反省して忸怩たるものがあります。


実を云うと、言い訳じみますが、この2週間ほど体調を崩して最低のコンディションでした。

左膝の関節が痛むのは半年間続いていることで理由にもなりませんが、風邪を引いて38度

ほどの発熱をしたのをきっかけにして、2年前から患っている心房細動が又始まって、動悸・

息切れが酷いのです。

老人の誰もが経験する動脈硬化に起因する心臓欠陥に過ぎず、特記するほどのこともないの

でしょうが、本人にすれば生命の危険をも危惧する気掛かりなのです。

でも老人ホームでは珍しくも何ともないことなのです。


別に特別に重病人扱いをしてほしいわけでもありませんが、周囲に平気な顔をしていられ

ると面白くないのでしょう。何となくイライラ状態が続いていました。

病気に限らず日常のことでも、本人が一所懸命に努力しているつもりなのに、周囲が当た

り前のように受け止めていると大変に不満を感じるものです。



私は本来「自己主張型」ではなく、むしろジコチューを憎み、出来るだけ自己主張を抑え

て、周囲との協調を図りながら「和を重んじる」タイプだと思っていますし、そのように

行動して来ているつもりです。

それはこのシルバーヴィラ向山で、家内に先立たれてから十数年間、モットーとして自分

の行動の基準にして来ました。

私を理解して下さる岩城祐子先生は勿論のこと、長年お付き合いして頂いている岩城隆就

社長も良く分かって下さっていると信じています。

ただ、それ以外の従業員の方々全員が理解して下さっているとは云えませんし、性格的な

相性等もあるかも知れませんし、個人差もあることで、「島健二と云う入居者はおとなし

くて、あまり自己主張をしない人間だ」と単純に思っている人が多いでしょう。


実は「内面的には物凄く自己主張が強く、言い出したら利かない強情っぱり」であること

を知らない人が多いと思います。その「内面的な嫌らしさ」を一所懸命に抑えているのは、

前に書きましたように、このシルバーに入居してから12年間、病と戦い続けて逝った家

内を守るために、心ならずも祐子先生を始めとして皆さんに大変ご迷惑をお掛けしたお詫び

に、私自身を殺してお返しをするつもりでしていることなのです。


23年間此処でお世話になって、私とシルバーヴィラは最早一身同体のようなもので、

私はシルバーヴィラを愛していますし、今後共入居者全体が住み易い理想郷にするために、

ホンの少しでもお役に立ちたいからなのです。

これは祐子先生と隆就社長には理解して頂いているつもりです。



今回のことは、こうした私の十数年来の生き方がごく普通のこと、当たり前のこととして

周囲に受け取られて来たこと(それで一向に構わないのですが……)に対して、「誰も私

の努力を評価してくれない……」という年来の不満のようなものがマグマのように蓄積し

ていたところへ、自分自身の健康的な不安状況が重なって、些細なことがきっかけで、噴

火してしまったように思います。


無理をして「良い子ぶって」やって来たことが周囲に評価されないからと云って、不満を

爆発させるなんて、最低のことで、それなら平素から我侭放題に振舞えば良いことですか

ら全く私自身の身勝手です。

私自身、「何であんな些細なことで怒ってしまったのか?」と呆れているくらいですから…。

言い訳にもなりませんが、私自身最早年をとって、老人性ジコチューがかなり頭を持ち上

げて来たのでしょう。

お恥ずかしい次第です。それは私自身が最も嫌い、かつ憎むことですから…。



今回のことは心からお詫びします。我侭や不満や甘えが突然噴出してしまったのです。

祐子先生、社長、当事者の方々ゴメンナサイ。

私自身の「生き方」を変えるつもりはありません。

今までどおり、良い子ぶって、周囲との調和をおもんぱかって、おとなしく生きて行きます。

別に周囲からそれを評価されようと、されまいと構いません。

自分自身の生き方のモットーはそんなことに左右されるものではありませんから…。


年相応を考えて、あまり無理をせず、同じような考え方だけは維持して行きたいと思いま

す。お騒がせしました。今後共どうぞ宜しくお願い致します。               目次へ