よくわからない歌:猿の歌
2009年2月5日
調査を依頼してあった図書館の司書さんから連絡がありました。
やはり日本全国に口伝で広まっているようで、青森から長崎のものまで見つかったそうです。
どこの歌も似ている部分と全く違う部分とあり、また、地方によっては「子守唄(寝させ唄)」だったり「遊戯唄」
だったり、またとある地域では「お話」だったりするようで、残念ながらどこが発祥の地かは特定できないそうです。
次の土曜に資料をお借りしてくる予定ですので、またそれを元に記事を書きたいと思っております。
(探している「兵庫のもの」にはまだ行き当たっていません。絵本の情報は皆無だそうです)
2009年2月9日
猿の歌ですが、少しずつ調べがついてまいりました。
膨大な行数になるので、全ての内容をここに記述するわけに行かないのが残念ですが、抜粋でご報告致します。
猿の歌について記載されている書物を8冊ほど図書館でコピーさせていただきました。
やはり、半端ではない数の猿の歌が日本全国あちこちにありました。
『(お話)昔、ある所ぇ猿が3匹おって…(中略)
そなたの猿も物知らず、こなたの猿も物知らずと数えていくと、
3匹の中じゃあ、真ん中の猿がほんのちょっと物知りじゃった…』
「全国昔話資料集成27 但馬昔話 兵庫」 (岩波美術社)
『(お話)あるところに猿が3匹いました・・・(中略)
そなたの猿も物知らず、こなたの猿も物知らずと数えてゆきますと、
3匹の中でまんなかの猿がほんのちょっとだけ物知りでした…』
「兵庫の民話 日本の民話」 (未来社)
この二つはどちらも「但馬のくにに伝わる動物昔話の一遍」として記述されていて、口調こそ違いますが、内容は
全く同じものでした。ちょっと賢い猿が、なまずをとってきて、他の猿に分けてやったら、自分の分がなくなった、
というものです。また、未来社の方には宍粟郡のわらべうたとしての猿の歌も載っています。
『♪猿が3匹おったげな先の猿は物知らず、後の猿も物知らず
真ん中の猿が物知りで なまず川に飛び込んで、なまず一匹おさえた…』
『♪朝起きてみれば、猿が3匹通る 後の猿は物知らず、先の猿も物知らず
いっち真ん中猿物よう知って なまず川へ飛び込んで・・・』
(奈良)
『♪向こうの山を猿が3匹つき通る 先の猿に物問えば、俺は知らぬとつき通る
中の小猿に物問えば、俺も知らぬとつき通る 後の小猿に物問えば、俺はちっと物知りた…』
(尾張童遊集、三州尾崎)
とあるのは「新講わらべ唄風土記」 (柳原書店)で、この中には「猿が3匹通る」式の唄は、青森・岩手・
秋田・福島・群馬・千葉・新潟・石川・福井・京都・大阪・兵庫・島根・広島・山口・高知・長崎などで子守唄
にも使用されているとの記述があります。
子守唄といっても、子供をあやす為だけではない唄も多くある、との記載の本も。
『♪向こう通る、猿が3匹通る 先の猿は物知らず、後の猿も物知らず
真ん中のちょび猿はよく物を知っていて…』
「うたってよ子守唄」 (アートヴィレッジ)
「長野岐阜のわらべ歌 日本わらべ歌全集13」(柳原書店)
初めの方は他の地域のものと類似していますが、とにかくこの歌、やたらと長い!
イワシも買わず、ナマズもとらず、花を折ったり、宿に泊まったり、小袖をこしらえたり。
歌詞が物語りになっていて、唄がえんえんと続くために子供が眠くなってしまうのだとか。
どちらの本にも「この種の歌は、元々子供達が手をつなぎ、右や左へぞろぞろと動いて遊ぶ時に使われたもの
ではないか」と書かれていました。
『♪向かい山 猿が3匹通る 先の猿も物知らず、後の猿も物知らず
いって(一番)の中のこん猿がよう物しっとって でんでん(銭々)一文拾うて
鰯を一こん買うて食べたらば、あんまり塩が辛うて
どんどん淵飛び込んで、水ガブガブ飲んだれば
あんまり腹が太うて、観音様へ上がって 屁をプッコラプッコラたれたらば
いかい(大きい)地蔵さん泣きやる こんまぁ(こまい=小さい)地蔵さん笑やぁる
泣くなよ、笑うなよ、十日の市にゃ ピィピィガラガラ買うちゃげの♪』
「島根のわらべ歌 日本わらべ歌全集20下」 (柳原書店)
遊ばせ歌だそうですが、これが一番ウチに伝わるのに似てる気がします。
同じく柳原書店の「日本のわらべ歌 歌曲集3」には「言葉遊び」として記載されており、楽譜もついていました。
屁をこくまではほとんど同じですが、その後にまだえんえんと歌が続きます。
畑野さんより
目次へ