2010.11.14
TPP参加は避けて通れない


TPPとはトランス・パシフィック・パートナーシップ(Trans Pacific Partnership)の略語、日本語に直すと

「環太平洋戦略的経済連携協定」だそうです。細かい内容はインターネットで検索して下さい。

要するに太平洋周辺の諸国で貿易や、人の流れ、資本の流れを自由化しようと言うことのようです。今日本で

これに加入するかどうか、大変な議論が巻き起こっています。

与党も野党も党内に賛成派と反対派がいて、対立しています。

 
この論争を見ていますと、幕末の攘夷派と開国派の対立に似ているような気がします。

鎖国が現実的でなくなり、結局開国に踏み切ったのが明治政府でした。かつての尊皇攘夷の志士たちが、政権を

とったら途端に開国したということが歴史に残っています。


今度のTPP参加の是非に関する論争も、この幕末の攘夷か開国かの論争に似ているような気がします。

日本の食糧自給率が非常に低いことは事実です。しかし食糧を自給自足することが不可能なのも事実です。

(牛肉でも鶏肉でも資料は全て輸入品です) 自給できない部分は輸入に頼らなければ、日本国民は飢えます。

輸入するためには外貨が必要です。その外貨は輸出で稼がなければなりません。


非現実的な攘夷を捨てて開国し、富国強兵をはかったから日本は帝国主義時代に生き残ることができました。

それができなかった当時の清国政府は、列強諸国の植民地になりました。

攘夷では独立を維持することは不可能だったはずです。


TPPは世界の趨勢だと思います。それに逆らうのは無理です。日本の製造業も必死の努力で国際競争力を向上

させました。鉄鋼産業しかり、自動車産業しかり、電器産業しかり。頑張らなかった企業または智恵のなかった

企業は、国際競争に耐えられず全て消えて行く運命を辿りました。
 

資源もない、国土が狭く土地価格も高い、大気排水汚染防止のためのコストも負担し、日本の製造業は今日の

発展を見ています。これに対し農業はどうか。政府の手厚い保護を受けてここまで生存してきました。しかし

それがかえって農業の近代化を遅らせたと思っています。日本の農業が競争力を失ったのは、政府の行き過ぎ

た農業(実は農家に対する)保護だったと思います。農村選出の国会議員は選挙対策だけを考え、農業政策の革新

を怠ってきました。これを改めないと日本は滅亡します。


巨大資本の農業進出を許さないと、日本の農業は滅びると思います。自動車や電器製品を製造しているのは、昔

ながらの村の鍛冶屋ではありません。それに引き替え、農業の主力は昔ながらの自作農。 これで国際競争をやれ

と言うのは、かつての「竹槍でB29と戦う愚」を繰り返すのと同じだと思います。今の日本の農政には、国際競争

などという視点が全く欠落していると思います。


率直に言って農林水産族議員、農林水産省、農業団体は全て農業に寄生している寄生虫だと思います。

私はかつて千葉県の友人から次のように言われたことがあります。「今の時代に篤農家がいると思いますか? 


そんなものはいませんよ。皆どうやったら補助金を獲得するかということだけ考えていますよ」 これは極論だ

と思いますが、今の農業制度をどうやって守って行くか、守ることしか考えていない人、現在の制度に安住する

ことしか考えていない人が大半ではないでしょうか?
 

私はNHKの日曜朝の番組で、全国にその土地の名産の製造に努力しておられる方が大勢おられることを承知し

ています。農林水産業に携わる方の中に、どうやって製品の付加価値を上げようかと努力しておられる方がおら

れます。日本の農政はそういう人々をどう評価しておられるのでしょうか? 
 

TPPには参加する。そして農業政策を転換し、国際競争力のある農業を作り上げる。

日本が生きて行く道はこれしかないと思います。

政治家は政治主導をいうなら、このような視点に立って貰いたいと心から願うものです。

                                                                                      目次へ