2007.12.1
「アルツハイマー病にならない!」を読んで



                                                                             増田 次郎


かつて米国の大統領だったロナルド・レーガン氏は、退任後アルツハイマー病を発症したことを公表され、

その後亡くなられました。アルツハイマー病が恐ろしい病気であることは皆さんご存じの通りです。

私は老人ホームで親しくしていた老婦人がアルツハイマー病にかかっておられ、次第に病気が進行して行く

のを見ました。実に悲惨なものでした。妄想、幻覚に悩まされ、次第に異常な行動をとるようになる。

身の回りのものが見えなくなると盗まれたという。自分で衣服を着替えることができなくなる。親しい人の

顔さえわからなくなりました。立派な方の人格が崩壊して行くのを見て、本当に恐ろしい病気だなと痛感し

ております。


私は認知症にだけはなりたくないと思い、前にも書きましたように認知症亡国論を唱えております。

そこで認知症にならないために、その関係の書物を読み始めました。その一冊目がこの本です。
 
 著者   井原康夫・荒井啓行
 
 書名 アルツハイマー病にならない!
  
 発行   朝日新聞社

本のカバーに、アルツハイマー病予備軍であるすべての人のための「アルツハイマー病にならない生活」の

手引きと書いてあります。著者の両先生は、お二人ともアルツハイマー病の研究者でいらっしゃいます。
 
値段が1,155円と手頃だし、新書版で大きな本ではないので是非お読みください。(私はどこからもお金を頂

いておりません。またほかにもよい本があると思いますが、取りあえず私が読んでわかりやすいと思ったの

でご紹介する次第です)
 

私がこの本で一番印象に残ったのは、アルツハイマー病は生活習慣病の一種であるかも知れないということ

でした。以下私の独断と偏見で選んだこの本の一番大事な、さわりのところだけご紹介します。
 

アルツハイマー病にかかった人の脳には、老人斑(アミロイドβ)、神経原繊維変化(τ)という二つの変化が

見られます。この二つの変化のうち、最初にアミロイドβが老人斑を作り、それから10年か20年経つと

τタンパク質が神経原繊維変化をつくるという順序で病気が進むそうです。

ただ正常な(アルツハイマー病を発症していない)高齢者の脳を調べたところ、老人斑は沢山見られましたが、

神経原繊維変化は見られなかったそうです。もっと長生きをしたら神経原繊維変化が現われて、アルツハイ

マー病が発症したのかも知れないと著者は言っておられます。

100才まで生きた方の脳には90%以上の方に老人斑が見られるそうです。


さてアルツハイマー病変が現われるのは、脳の最も表面にある大脳皮質だそうです。

まず最初に侵されるのは側頭葉(記憶、言語理解をつかさどっている)で、次に頭頂葉(感覚や空間認識)が

やられ、後頭葉(視覚)、前頭葉(精神活動、運動機能、発語機能)の順序だそうです。

側頭葉が出発点だということで、最初に出現する症状が物忘れだというのは頷けます。

病変が側頭葉から頭頂葉に進むと空間認識がなくなり洋服が着られなくなります。

後頭葉まで行くと人の顔の判別ができなくなるわけです。

この本にはアルツハイマー病の診断基準が掲載されています。既に随分研究が進んでいます。


私なりに理解できたのは長生きすればするほど、アルツハイマー病にかかる可能性が大きくなることです。

平均寿命の短い国、地域ではアルツハイマー病にかかる人はいないそうです。そして認知症の人の70%が

アルツハイマー病だといわれます。
 
幸いなことに、最初に書いたアルツハイマー病は生活習慣病の一種かも知れないという言葉でわかるように、

高血圧や糖尿病にならないような生活をすればアルツハイマー病を発症しにくいことです。


長生きは心身共に健康であってこそ幸福なので、不健康で長生きをするのは不幸そのものです。

本の中には「アルツハイマー病にならない生活」という章があります。

さらに参考レシピまで掲載されています。

皆さんご一緒に努力して、健康で老後をすごそうではありませんか。

                                                                                   目次へ