2006.5.2
老人よ大志を抱け




                                                                           増田 次郎


大志とは大げさなと笑われるでしょうが、力のない老人にとってはこの程度でも大志だと思っています。

それは最後の瞬間まで「認知症にはならないぞ」という志です。

前に何度も申し上げましたように認知症は社会の敵であります。

「人間としての誇り」がどうとか申しますが、認知症になってしまったら誇りが同じほこりでも埃になり

ます。痴呆という言葉がありますが、認知症の方の行動はまさしく痴呆であります。

私は認知症にだけはなりたくありません。

私と同じ考えを持つ方は、皆さん異口同音に「認知症になるくらいなら死んだ方が増しだ」といわれます。

前にもお話ししましたように、大学教授、医学博士、大会社の社長など社会的地位の高かった方も、認知

症を無条件で免れる保証はありません。位階勲等も学位もお守りにはなりません。

誰しも死後の名誉を考えない人はいないと思います。

認知症になれば、死後全ての人から「あの人には本当に困らされた。本当に迷惑した」と噂されるでしょう。
 


前回引っ越しで大苦戦した話をご披露しましたが、私が77才の年齢で、不自由な身体でここポルテドール

光が丘に入居した最大の理由は「認知症の予防」にあります。


老人ホームではとことん怠惰な生活が許されます。

朝目が覚めると、自室のドアの外に新聞が置いてあります。

ゴミはくずかごに入れて置くとヘルパーさんが集めてくれます。

私は食堂で食事をしていましたが、部屋で食事をしている方もありました。

こういう方はヘルパーさんに車椅子で散歩に連れ出されなければ、外の空気も吸わないし他の人との会話

もありません。手紙や荷物は全て事務所が受け取って、一人一人に配ってくれます。

薬も事務員が管理してくれ、食事の時渡してくれます。

夜の10時頃は夜勤のヘルパーさんのラッシュアワーで、おむつの交換に駆け回っています。

要するに老人ホームでは自分で考えて行動する必要は皆無なのです。

この状態で認知症にならないということがいかに困難かはご想像がつくと思います。



ここポルテドール光が丘では、新聞や郵便物は一般のマンションと同様階下の郵便受けに投入されています。

受け取るためには階下までとりに行かなければなりません。

ゴミ集めは可燃物が月曜と木曜、不燃物が土曜と決まっています。

ただしここは自立支援を謳っていますから、ゴミは自室の玄関前に置くだけでOKでスタッフが表まで運ん

でくれます。書留郵便物、宅配便、その他配達される荷物は全て自室の玄関で受け取らなければいけないし、

薬は自分で忘れないように飲まなければなりません。

私も上げ膳据え膳に馴れて、最初はここの暮らしにとまどいました。
 

ここはこのように一般社会にいるのとほぼ同じように行動することが要求されます。

しかし支配人の中村さんは介護福祉士で、長年在宅福祉の会社で管理職をしていた人ですから、われわれ

高齢者の弱点をよくカバーしてくれます。また館内はバリアフリーで、危険は全くないと思います。


ポルテドール光が丘は全部で18室。契約済みはわれわれ入居者を含め現在6室です。

残りは12室です。昨日はS様というご婦人がお見えになり、説明を聞いて行かれました。

早く全てのお部屋が埋まりこの施設の経営が安定してくれないと、われわれ入居者は心配です。

というわけでCMじみた話で恐縮ですが、島、増田両名の人生観に共鳴している方に是非ご入居頂き、

認知症と無縁の生活を送って頂ければ幸いです。

われわれの暮らしぶりを見物にお出かけ下されば大歓迎いたします。
                                                                               目次へ