2006.4.8

割り箸事件に思う



                                                                                 増田 次郎



くわえていた綿菓子の割り箸が、転んだとき喉に刺さって亡くなった男の子がいました。

この事故を医療過誤だと考える人がいます。

私も確かに医療が100%正しかったとは思いません。しかし小さな子が箸を口にくわえて遊んでいたら、

制止するのは親の責任ではなかったでしょうか。


私が子供の時箸をくわえて立ち上がると、親からこっぴどく叱られました。

危ないから絶対やってはいけない。転んだらどうする。喉に刺さって死ぬぞと目から火が出るほど叱られ

ました。 私も息子たちにそう躾けました。息子たちも自分の子供に同じことを躾けたと思います。


子供をこのような不慮の事故で亡くした親がやりきれない気持ちでおられるのは理解できます。

しかしそれを見過ごしたお医者さんを訴え、裁判所が無罪を言い渡したのは怪しからんというのは私には

納得できません。もしあのとき大変なことだとお医者さんが考え、脳神経外科の先生を呼んでくれたら命

が助かったかも知れないと、親御さんが恨めしく思うのはもっともです。

しかし裁判で「診察を怠った過失はあった」と当直医を非難し、「しかし脳神経外科の専門医が来ても、

救命の可能性は低かった」という判決が出たのに、親御さんはまだ納得していない様子です。

控訴すると言っておられるようです。


親御さんには気の毒だけれど、私はこの坊やが死ぬことになった最大の原因は「親の子育てに落ち度が

あったこと」だと確信しています。本来子供を育てるからには、子供にとってどういうことが危険かとい

うことを知ってなければならないと思います。

この親御さんはそれを十分にはわかっておられず、自分の責任を十分には感じておられないのではないか

と思います。自分の落ち度は棚に上げて、何でも他人のせいにする。それが今日の日本の風潮だとしたら、

考え直すべきだと思います。


酷いことを言うようですが、私は亡くなった子供さんに代わって子供の保護に手落ちがあったと親御さん

を法廷の被告席に立たせたいと思うほどです。

もちろん私も人の子の親、親御さんのやりきれないお気持ちはよくわかります。

しかし己の過失は顧みず、お医者さんを有罪にしてこの人の一生を台無しにしたいと考えておられるようです。

それは道徳的に許されないことではありませんか。


お医者さんに有罪の判決が出たら、亡くなった子供さんが生き返るのですか。

それに有罪判決が出たら、天国の息子さんが喜ばれると思いますか。

「その罪を憎んで人を憎まず」といいます。

息子さんが仕返しにお医者さんの一生を台無しにしたいと思われるのですか。

 

親が自分の過失の埋め合わせに、お医者を処罰したいというのはおかしな話です。

割り箸事件に裁判所が下した判決は妥当だったと思います。神様でない以上、ミスは付き物です。

医療過誤が近頃問題になっています。お医者さんも神様ではないのですから、ミスを犯す可能性はあります。

ミスをあまりに厳しくとがめられたなら、お医者はやっていられないでしょう。



繰り返しになりますが、私も人の子の親です。こんなことを言いたくはありません。

誰かがこの事件を取り上げないかと思って、待っていました。

しかしこんな嫌なことはどなたも話題にしたくありません。

このままにするのは卑怯だと思い、敢えて私の見解を述べました。

親御さんを誹謗するつもりは毛頭ありません。

ただこれ以上この問題をつつくのはやめてもらいたいと思います。

被告とされたお医者さんを裁判から解放して上げて欲しいと思うのです。

このお医者さんにもご両親や妻子がおられるでしょう。その方々の身にもなって頂きたいのです。

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