2006.3.27
BSE牛肉騒ぎで思うこと
増田 次郎
先ずアメリカとアメリカ人について書いてみたいと思います。
ステレオタイプな見方と言うご批判は覚悟の上で申し上げますが、私はアメリカという国、そこに住む
アメリカ人は、全体としてきめ細かい神経を持たない非常に大ざっぱな国、大ざっぱな人々だと思って
います。日本人の目からすると、何故日本人があれほどBSEを恐れているのにアメリカ政府は危険部
位とされる背骨が混入した牛肉を送ってくるのだろうと不思議に思います。
まさかわざとではないと思いますが、末端まで重要な情報が届いていないことは確かなのでしょう。
かつて「世界中で人気の高い米国車が日本に輸入されないのはけしからん」と米国政府が日本を非難し
たことがありました。米国国内の自動車価格に比較して、日本国内の米国車価格がかけ離れて高いとい
われました。私の記憶に間違いがなければ、その時の日本輸入商社の説明では米国車は日本到着後溶接
まではがして全部分解点検しなければならない。
溶接が不完全だから、そのまま販売すればいずれ「雨漏りする」とクレームを受ける。
ボディ内部の見えない空間に腐ったランチボックスが残されていた。
あのまま売れば臭い車を売ったと叱られる。
要するに作業を全部やり直すのがコストアップの原因で、売価が高くなるのはやむを得ないというのが
輸入商社の説明でした。
その後のビッグスリーの凋落ぶりは、まさしく自らが招いたものです。
日本の自動車メーカー各社が米国に建設した工場は業績好調です。
これは作業をしているアメリカ人が問題なのではなく、アメリカ自動車企業のマネージメントに問題が
あったことを証明しています。
BSE牛肉問題もこれと似たところがあるようです。
テレビのニュースを見ていると、米国のある食肉会社が「米国も牛の全頭検査をやろうではないか」と
農務省に提案したそうです。
しかし「全頭検査は非科学的で無意味であり、コストが上がるだけ」と農務省当局から一蹴されたと
テレビに報じられていました。役所は日本でも一旦言いだしたことは変えません。
「牛肉が売れなくても困るのは企業だから」と言ってしまっては身も蓋もありませんが、役所の対応は
日米とも変わらないように思います。
しかし日本企業なら「日本政府が米国に圧力をかけてこちらの要求を呑ます」ことなどあり得ないことを
十分承知しています。日本企業は「お客様の要望にあったものをつくる」こと以外に生きて行く道がない
ことを骨身に沁みてわかっています。
もっとも米国企業にそれをやられていたら、今日の日本の繁栄はあり得なかったでしょう。
文字通り米国の一人勝ちに終わっていたでしょうね。
米国は昔から工業大国でした。
しかし自動車では日本企業の攻勢にたじたじであり、得意としていた航空機でさえ欧州(エアバス)の
追い上げが急です。米国の軍事大国の地位だけは間違いないと思います。
日本は武器輸出をしませんから、この面では日米間に摩擦が起きる心配はなく結構なことです。
さて日米両国はどんなことがあっても離婚することができない夫婦のようなものです。
米国が世界最大の農業大国であることは間違いないし、将来ともそうであり続けるでしょう。
日本は今や平成元禄、飽食の時代のまっただ中にあります。
60年前の食糧難を知らない世代が人口の過半数を占めています。
あの時代の辛さを知らない世代の人々に理解しろと言うのは無理でしょうが、食糧難対策だけは国と
してしっかり立てて置かなければなりません。
今中国はエネルギー確保だけに目が向いているようです。しかし世界的な食糧不足が万一起きたとしたら、
中国は摩擦も何も構わず食糧確保に全力を挙げるでしょう。
牛肉がなければすき焼きは食べられません。すき焼きを食べなくても命に別状はありません。
でもそれでよいのでしょうか。
うるさいお客は供給者に嫌われます。
アメリカ人が平気で食べているものを、日本人は何だかんだと難癖をつけると思われる。
アメリカで使わない非加熱血液製剤を長年使い続けてエイズ患者をつくった。
アスベストを長年使い続けて大勢の肺ガン患者をつくった。
その日本人が何故牛肉だけにうるさいのだとアメリカ人が考えたとしても不思議ではありません。
産地表示をきちんとすれば、後は食べるか食べないかは個人責任でやればよいのではありませんか。
アメリカ人の無神経ぶりにはがっかりしますが、今に始まったことではありません。
国益を重んじるのが一番大切だと思いますがいかがでしょうか。
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