2006.3.1
神様にお願い




                                                                                                                             増田 次郎


デンマークの新聞にイスラム教の予言者ムハンマドの似顔でテロリストを風刺する漫画が出たことが

大変な騒ぎを起こしました。宗教心のない私にとっては全く理解の範囲を超えています。

漫画家や新聞の編集者は、この漫画がトラブルの引き金になることを想像できなかったのでしょうか。

私は宗教心を持たない男ですが、他人様の信仰の対象を侮辱したり揶揄したりしようとは思いません。

他人が嫌がることをするのはよくないと思っています。

それは社会生活をする上で、必ず守るべきエチケットではないでしょうか。



とはいえ宗教を侮辱されたことを理由に、暴力で報復するというのは自らの信仰を汚すことになると思

います。私はイスラム教の教義を知りませんが、この宗教は暴力による報復を認めているのでしょうか。

キリスト教、仏教と並んで世界三大宗教の一つであり、世界で最大の信者を持つといわれる宗教がその

ような暴力を認めるものだとは信じられません。

殊にその漫画を掲載した新聞の不買運動をする程度ならわかりますが、新聞社の所在国だというだけで、

デンマークの大使館に投石したり放火したりすることを宗教が認めるとは考えられません。



私は宗教は愛でなければならないと思います。

寛容の精神がなければならないと思います。

その宗教を信ずる者も信じない者も、ひとしく包容するものであって欲しいと思います。



ごく普通の日本人は、子供が生まれるとお宮参りに連れて行きます。

七五三など子供の成長過程でも神社のお世話になるのが普通です。子供が成長して結婚式となると、

昔は神前結婚が普通でしたが今では教会で牧師さんのお世話になるのが流行しています。

ところが死んだときは、お寺さんのお世話になるのが一般的です。


もっとも私のような罰当たりは、お経はなるべく短い方がよいと思っているくらいで自分の葬式には全く

無関心です。私はそれでも宗教は阿片であるとは思っておらず、かつて聖書を読んだことがありますし、

仏典もそのうち読みたいと思っています。

もろもろの宗教は、全ての人類が平和な世界の中で共存共栄するためにある。

人間同士が殺し合いをしないためにあるのだと思っています。



「真の神を信じなさい」という言葉をよく聞きます。

「偽りの神を信ずる者は地獄に堕ちる」ともいわれています。

確か聖書にはどこかにそのように書かれていたと思います。しかし真の神様と、偽りの神様を判定する

のはいつの時代でも、牧師さんなどの宗教家でした。しかし宗教者は自分に都合の悪い者を異端者として

宗教裁判にかけて拷問をしてでも自分の罪を認めさせました。そして挙げ句の果てに火あぶりにするなど、

残酷きわまりない方法で抹殺しました。



イラクに真の平和が蘇るためには、民族間、宗派間の矛盾を克服しなければならないといわれています。

しかしわれわれ傍観者の目で見ると、民族間の争いより宗派間の争いの方が激しいように思われます。

昔川柳に「宗論はどちらが負けても釈迦の恥」という句があったように記憶しています。

シーア派とスンニ派の争いは、どちらが負けてもアラーの神の恥になるのではないでしょうか。



日本には古来八百万(やおよろず)の神という言葉があり、日本人は有形の物はもちろん、無形のものに

まで神が宿っていると考えました。奈良県には大三輪神社があり、この神社のご神体は三輪山そのもので、

大物主の神の宿り給うところとして大変格式の高い神社です。

また那智飛龍(滝)神社のご神体は、那智の大滝そのものです。

私は、物にも人にも獣にもそれぞれ神が宿るという日本の古い時代の信仰心が好きです。

田舎に行くと今でも小さな川の傍に「水神様」という小さな祠(ほこら)があります。

水に神性を認めていれば、水を汚す者はいなくなり究極の環境保全になるのではありませんか。



環境保全を唱えるグリーンピースのような「環境保護団体」があります。

声を大きくして環境保護を唱える戦闘的な団体と、水神様をお祀りしている村のお年寄りと、どちらが

環境保全に寄与しているでしょうか。


私は宗教者を余り尊敬しようとは思いません。

中には立派な方もいるのでしょうけれど、どうも「飯の種」になさっている方が多いような気がするのです。

「飯の種」ならそれはそれで結構ですから、

人殺しだけは神様から禁止命令を出して頂けないものでしょうか。


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