2006.2.5
食糧難が来たらどうしましょう



                                                                                                                                増田 次郎



今日本には食べ物が満ちあふれています。

食べ物がなくて腹が減ったという記憶を持っているのは、われわれ
70代以上の老人だけでしょう。

しかしその食糧難時代が再来しないという保証があるでしょうか。


日本人は「のど元過ぎれば熱さを忘れる」という能天気な遺伝子を持っているようです。

その一方で「遺伝子組み換え食品を食べるのは嫌だ」とか「BSEの危険がある肉は絶対食べない」とか、

食品の安全性には神経過敏です。ところが中国産野菜には日本で禁止されている農薬が散布されている可能

性があるのに(可能性ではなく実際に発見されていましたね)、マスコミが騒がなければ軽視していました。


こんなことをいうとあちこちからお叱りを受けるかも知れませんが、

アメリカ人はアメリカの牛肉を食べています。

アメリカの食品安全に関する法規はかなり整っていると思います。

アメリカの牛肉が危険だったら、米国政府が販売を認めることはないでしょう。

アメリカ人が食べてヤコブ病患者が多発しているという話は聞いたことがありません。

大豆などアメリカの農産物はほとんどが遺伝子組み換え食品だそうです。

遺伝子組み換えでない大豆を輸入するのに、商社マンは大変苦労しているようです。


そのくせ日本ではアスベスト禁止が米国よりずっと遅れました。

アメリカにジョンマン・ビルというアスベストを製造していた会社がありました。

この会社はとっくの昔に(多分
10年以上前に)健康被害に対する賠償を求められ倒産しています。

仕事で米国の雑誌を昔から翻訳していますが、ジョンマン・ビルが集団訴訟を受けているという記事が

頻繁に雑誌に掲載されていたのは今から
10年以上前です。

信用なさらない方はグーグルの検索エンジンで調べて下さい。

エイズ関連の血液製剤騒動のときもそうでした。日本の役所の規制は大体において遅いのです。



残念ですが、私は世界標準に追随した方が安全だと思います。

テレビのあるキャスターが昔いった「世界の常識は日本の非常識、日本の常識は世界の非常識」という

毒舌を思い出します。遺伝子組み換えで害虫のつかない野菜ができたとします。

農薬メーカーは商売がなくなるから猛然と反対するでしょう。

一部の篤農家は無農薬の野菜作りに全力を上げるでしょう。

しかし皆さんは虫がかじった痕のあるほうれん草を買いますか。蛆(うじ)がついた白菜を買いますか。

日本人の繊細な神経は尊ぶべきだと思います。しかし度を越すと自分の首を絞めることになります。



工業製品では、日本市場で売れるものは世界中どこでも受け入れられるというのが定説です。

かつて私は世界に冠たる工業国のドイツからの機械輸入を担当したことがあります。

日本のメーカーならきれいに仕上げてある場所が、ドイツメーカーは鋳物の肌そのままでした。

機械は要求される性能を満たしていさえすればよい。見てくれはどうでもよいというのが、海外メーカー

の常識でした。

日本人は見てくれの悪さを我慢できません。完全主義者ですから手間をかけても非一点打ち所のない製品を

つくりたかったのです。その結果、日本製品は世界中で高品質を賞賛されるようになりました。


遺伝子組み換え食品を許容するか、自然には存在しないはずの農薬使用を認めるのか。

辛い選択ですが遺伝子組み換え食品を認めるべき時が来ているように思います。

お前は年寄りだからそう思うのだろうとおっしゃる方もあるでしょう。

日本は厳しい規制で世界最長の寿命を達成しました。

しかしその結果認知症の老人の数も増えました。

私は癌と認知症を比べたら、癌にかかる方が嬉しいです。

癌で死ぬ人は最期まで人間としての誇りを保っておられます。私もそうありたいと思っています。


皆さんはどう思われますか。

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