2006.1.20
毛沢東とホリエモン




                                                                                                                          増田 次郎


年末から年初にかけて、

ユン・チアンとジョン・ハリデイ共著の「マオ」、副題「誰も知らなかった毛沢東」を読みました。

上下二巻、
1,000ページを超える大著で疲れました。

この本に書かれていることが全て真実かどうかはわかりません。

しかしかなりの部分は真実であろうと思われます。

これを読んでみると毛沢東という人は、飛んでもない人だったと思わざるを得ません。

私にとって最も印象が深かったのは、毛沢東は中国を自分の生きている間に世界の覇者にしたかった、

自分が全世界の支配者になりたかったということです。



人は自分の財産(毛沢東の場合は中華人民共和国)を自分の子孫に譲りたがるのが普通だと思います。

北朝鮮の金日成はそうでした。また日本でも豊臣秀吉、徳川家康など日本史に出てくる英雄の多くは、

皆自分が作り上げた政権を子孫に継承させようと執念を燃やしたようです。

現代の大会社の創業社長も一部の例外を除きほとんどが同じです。

ところが毛沢東は肉親に対する愛情がなかったのか、前記の書物からは世襲に熱心だったという印象は

受けませんでした。



毛沢東の場合は、子孫がでなく「自分が世界の王者になる」ことに対するこだわりが非常に強かったよう

です。これが成功できそうにもないプロジェクトを強行して、中国国民に大きな災いをもたらした原因で

はなかったかと思われます。


「マオ」によると毛沢東は大躍進、文化大革命と大勢の人を殺しました。

反対者に対する弾圧は恐ろしいものでした。

また国民に十分な食糧を与えず、夥しい餓死者を出したといわれます。

他人が死ぬことには全く感情を動かさなかったと書かれています。

歴史の中に暴君と言われた人は数多くいますが、毛沢東ほど大勢の人を殺した暴君はいなかったようです。



さてホリエモンこと堀江貴文氏と毛沢東には共通点があるように思えます。

ホリエモン氏は「自らがオーナーとして君臨するライブドアの企業価値を日本一にする。

トヨタ自動車を追い抜く」ことが望みだと聞きます。

そのためには何でもあり。違法な情報操作を行ったという疑いで現在司法の追求を受けていることが報じ

られています。



ホリエモン氏は年がまだ33才ですから、自分の生きている間にトヨタ自動車を追い抜くという目標を達成

すべく、合法、非合法のすれすれを突っ走っているのでしょう。

しかし目的を達成するのに手段を選ばないというのには首をかしげたくなります。

「人の心も金で買える。金で買えないものはない」というのが氏の信念だそうです。

これは毛沢東の世界制覇の野望を達成するために多数の人を犠牲にしたのと同じではないでしょうか。


毛沢東は腹心の部下に大量殺人を強制しました。

ホリエモン氏は人殺しはしませんが、部下を使ってルール違反すれすれの株取引の中で利益を上げてきた

ようです。株取引では儲ける人がいれば、必ず損をする人がいます。

ルールに則った取引なら、損をするのもしないのも全て自己責任です。しかしホリエモン氏がルール違反

をやっていたとすれば、損をした人はホリエモン氏に殺されたようなものです。


司法の捜査が入ったことで、ライブドアの株価は連日暴落しています。

ホリエモン氏を信じて株主になった人に対して、ホリエモン氏はどう思っているのでしょう。

毛沢東と同じように自分の野望を達成するためには、他人のことなど考えていないのでしょうか。

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