2006.1.5
外交の上手下手




                                                                                                                       増田 次郎


よく日本は外交が下手だといわれます。

しかし私には日本の外交が上手なのか下手なのかよくわかりません。

上手下手というのはどういう基準で評価するのでしょう。

かつて日本は米国との開戦に際して最後通告が遅れるという大失態を演じました。

これは明らかに失態で、「不意打ち、だまし討ち、卑怯」という非難を受けた原因をつくったわけです。

当時の米国駐在日本大使館の責任は誠に重大でした。これは外交が上手か下手か以前の問題でしょう。

いわばルール違反で失格したようなものではないでしょうか。



しかし本来外交は、企業対企業の交渉、個人の交際、夫婦関係と同じではないでしょうか。

基本は誠実でなければならないと思います。

「ライバル企業の裏をかく」ことしか考えない。受注するためには手段を選ばない。

利益を上げるためには何でもあり。そんな企業が信頼を得ることができるでしょうか。




だます、裏切る。
70年近く前にナチス・ドイツとソ連が突如として不可侵条約を結び、当時の平沼内閣が

「欧州の天地は複雑怪奇」という声明を残して退陣したことがあります。

その後ナチス・ドイツはソ連と密約を結び、ポーランドに侵入しソ連と分け取りにするという暴挙を行い

ました。ドイツはソ連を信用させるため、日ソ不可侵条約を結ばせましたが、独ソ開戦後この条約締結が

邪魔になり後悔したようです。

この日ソ不可侵条約を信用した日本は、連合国に対する講和斡旋にソ連を頼りましたがソ連はこれを裏切り、

不可侵条約を踏みにじり日本に引導を渡しました。




ナチス・ドイツは意表をつく外交で世界を攪乱しましたが、最後は全世界を敵にして戦う羽目になり、

独裁者ヒットラーは自殺し、国は焦土になりました。

ソ連は日本を裏切り北方領土を奪いましたが、ご承知の通り米国との覇権争いに敗れ自壊して、その後を

継いでいるのが現在のロシアです。

しかしソ連外交の遺伝子は残っており、「約束は破るためにある」という原則および「武力と石油資源を

背景にした力の外交」は少しも変わっていないようです。



米国はどうでしょうか。

力を背景にした外交はロシアなどと変わらないと思います。

しかし
60年前に惨敗した日本に食料援助をしてくれたことは忘れられません。

新憲法など日本弱体化のための強引な占領政策はありましたが、万一ソ連に占領されていたとしたら

どうなっていたか。今日の繁栄があり得なかったことは確かです。

私は米国のやり方の全てを肯定するつもりはありません。

自分の正義とすることをほかにも押しつけようとする。そのため無用の反発を受けて来ました。

しかしベトナムは米国を追い出すことに成功しましたが、はたしてその後幸福だったでしょうか。

中国軍が侵攻してきたこともあります。昨日の友は今日の敵。何が起こるかわかりません。



何をするのかわからない相手とルールなしの暴力ゲームを戦わなければならない。

しかしルールなしの暴力ゲームを仕掛けた者には、必ずその報いが来ているようです。

やはり人をだましたり、裏切ったりしていて最後まで幸福に行くことはあり得ないように思えます。

愚直(バカ正直)という言葉があります。

人間も愚直であるべきだし、国家も愚直であるべきではないでしょうか。



「上手の手から水が漏れる」という諺があります。

「正直の頭に神宿る」ともいいます。


私は愚直こそ最善の策ではないかと思います。

嘘と駆け引きで固めた外交は日本人の本質に合っていないと思いますが、

皆さんはどうお考えでしょうか。


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