2005.12.30
平成の世にも悪代官はいる



                                                                                                                    増田 次郎


ときどき水戸黄門のテレビドラマを見るときがあります。

筋立ては誠に単純で、悪代官が悪徳商人ややくざと組んで善良な庶民をいじめている。

たまたまその土地を通りかかった「先の天下の副将軍、水戸光圀公」がお供の助さん、格さんなどを従え

悪者たちを相手に大暴れ、ほどのよいところでお供が「ものども、頭が高いぞ。この葵のご紋の印籠が目に

入らぬか。このお方をどなたと心得る。おそれおおくも先の天下の副将軍、水戸光圀公なるぞ」と叫んで、

悪者一同ウヘーと平伏して終わるという誠に単純な筋書きです。



普通はこんな単純でわかりやすい悪者はいません。

しかし不思議なことにそれがいるのです。

私の入居している有料老人ホーム「シルバーヴィラ向山」の姉妹施設に創生苑という特別養護老人ホーム

(特養)があります。

特養は税金から資金が投入されていますから、建物は実にゆったりできていて広い会議室や集会のできる

スペースがたくさんあり、私たち民営の有料老人ホーム居住者から見ると羨ましいほどです。

施設長の岩城祐子先生が、先日創生苑の余裕スペースを利用して、学童保育を計画されたことがあります。


しかしこの企画はお役人のクレームで中止されました。

「この建物は公費で特養として建築された物である。従って本来の目的以外に使うことは認められない」。

平成の代官様は頭が固いのです。学童保育で入居者が粗末に扱われるとしたらこれはよくありません。

しかし特養に学童が遊びに来て、入居者がお手玉、あやとり、折り紙を教えたり、けん玉、ベーゴマ、

メンコなどの相手をしたりすれば、特養には必ず活気が出ます。

これは入居者の認知症防止によい影響が出るはずです。



私は老人ホームに入居する前、世田谷区の深沢に住んでいました。

地元の身体障害者の方々と交流する中で、ボランティアの方から等々力小学校の学童保育に参加してもらえ

ないかと誘われました。放課後親御さんが共働きのご家庭は、子供が帰宅しても一人で親の帰宅を待たなけ

ればなりません。いわゆる鍵っ子です。

私は低学年の子供達に本の読み聞かせをしようと考え、参加することにしました。

実際には本の読み聞かせを聞いてくれる子はあまりいませんでした。

しかし将棋を指したり、ゲームをしたり、お祖父さん役でその辺に座っているといたずらをしに来る子が

いたり、中には私の膝に乗って遊ぶ子までいました。

私は今でも学童保育に参加することは高齢者の認知症防止に大いに役立つと思っています。



今下校途中の小学生を変質者が襲う凶悪事件が多発しています。

下校する小学生を特養で預かり、親が帰宅後迎えに来るようにするなら、これも安全対策の一つではない

でしょうか。



前例のないことはやらない。やらせない。

福祉担当のお役人が自分の縄張りを教育関係者に明け渡すことは絶対にできない。

そういう代官様の意識が目に見えるようで情けないです。

そんなことをやっていて小さな政府ができるわけがありません。

しかも岩城先生は口を濁しておられますが、こういう提案に対しては「よけいなことを言う」といった

代官様の不快感がいろいろな形で風当たりになって来るらしいのです。

私は石原都知事を信頼していますが、末端には「親の心子知らず」の悪代官が沢山いるようです。



幸か不幸か、私は都を含め官庁から翻訳の仕事を頂いておりません。

もちろん生活保護を受けているわけでもありません。

幾ら「悪代官」でも私に「刺客」を送るわけにも行かないでしょう。

もっとも私は既に
77才。子供は立派に自立しており、孫も健康で何の心配もありません。

私たちより少し上の年代の人は、大勢戦争で命を落とされました。

万一私に刺客が送られ殺されたとしたら、年金受給者が一人減り、悪代官が一人懲戒免職になりますから

国家財政健全化のために喜ぶべきだと思います。


皆様に「悪代官」の存在をお知らせして、石原都知事や小泉総理など、現代の黄門様から鉄槌が下される

ことに期待しています。


今年も終わります。一年間ご愛読有り難うございました。来年もどうぞよろしくお願い致します。

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