2004.9.27
長かった夏と環境保護


                                                               増田 次郎

さすがの猛暑もお彼岸が過ぎてようやく下火になってきたようです。

老来とみに暑さに弱くなったせいもあるとは思いますが、真夏日、熱帯夜の日数や最高気

温など数字の上からしても、今年の夏は私にとってかなり厳しいものでした。

昨年秋の開腹手術の影響もあって、身体の疲れは近年で最悪でした。


暑さもさることながら、この夏は台風の当たり年でした。

強風プラス大豪雨で、日本でも随分大勢の方が亡くなられました。

北米では次々にハリケーンが襲来し、人的にも、物的にも大変な被害が出たようです。

台風とハリケーンのほかインド洋で起こるサイクロンも、呼び名が違うだけで気象現象と

しては同じなのだそうです。


異常な高温と台風ゃハリケーンの頻発が今年だけの偶発現象ならよいのですが、いろいろ

警告されている地球温暖化現象によるものだったら大変心配です。

温暖化が進めば南北両極の氷が解け、海面が上昇し南洋の島々は水没するといわれていま

す。また日本列島は現在の赤道直下並みに気温が上昇し、熱帯特有の風土病が流行すると

警告されています。

暑さに耐え難かった今年の夏が常態になれば、人間は犬のように舌を出し、地面に腹をつ

けて寝ていなければならなくなるかも知れません。



温暖化の一因は空気中の二酸化炭素量増加だといわれます。

二酸化炭素量が増える最大の原因は、エネルギーを得るために化石燃料を燃やすためです。

発電所で燃料を燃やし、熱エネルギーを発生させて発電する。自動車や飛行機などは、

燃料を使用して発生させたエネルギーで移動します。ここでも二酸化炭素が発生します。

われわれ人間自体も酸素を呼吸して、二酸化炭素を吐き出しています。考えてみれば大気

を一番汚しているのはわれわれ人間であり、誠に罪深いことです。

私が生きている間は温暖化が致命的なところまでは行かないでしょうが、私の息子、さら

には孫の時代にはどうなるか誠に不安です。



二酸化炭素排出を減らすために、われわれは何ができるでしょうか。

荷物が重くても自動車に乗らずに電車で行く。暑くてもクーラーはつけない。

いうのは簡単だが、戦争中ではあるまいし「贅沢は敵」「欲しがりません、勝つまでは」

で今の快適な生活を捨てることができますか。

より快適な生活を求めるのが当然ではないでしょうか。

江戸時代並みとはいわないまでも、昭和30年代の生活水準でやって行けるかと質問され

れば、私は無理だといわざるを得ません。


生活水準を落とすことなく、節約でエネルギーの消費量を抑制することは、現実的ではな

さそうです。現実的に可能なのは、省エネルギー型の機器を使うことと、二酸化炭素を排

出しないエネルギーを利用することしかありません。


乗用車はガソリン1リッター当たりの走行距離が、非常に長くなったようです。

また家電製品は随分電力消費量が減っています。

工場は私が現役だった時代から、必死になって省エネルギーに取り組んできました。

これからも真剣に取り組んで行くでしょう。しかし省エネルギーだけで全てを解決できる

と思うのは甘いと思います。


化石燃料を使わない発電も進められています。

風力、太陽発電も既に実用化されてはいますが、所詮これは補助的なエネルギー発生手段

以上のものになるはずがなく、現代の巨大な電力消費量のかなりなパーセントを代替する

ことはあり得ません。

好き嫌いは別にして、頼りになるのは原子力だけでしょう。

原子力を無視して二酸化炭素排出抑制目標の達成は不可能です。


原子力発電を全廃するという国があるようですが、こういう国は原発王国のフランスから

電力を輸入するらしく、それは二酸化炭素排出抑制を他国に丸投げするわけで、無責任き

わまりないといわれても弁解できないと思います。


電力会社にお願いしたいのは、何より安全対策です。

原子力が嫌われるのは、安全に疑問を持つ人がいるからです。

かつて米国のスリーマイル島原発が大事故を起こしたことは生涯忘れられません。

電力会社の方は常に緊張を緩めることなく、無事故運転を考えて頂きたいと思います。

事故を起こしたときのコストを考えると、無事故こそコストダウンのスタートであります。



日本は二酸化炭素排出抑制を目的としたいわゆる京都議定書に調印しています。

もともと省エネ先進国だった日本は、ほかの国と比較すると非常に厳しい基準を押しつけ

られています。つらいことですが何とかして目標を達成しなければなりません。

日本の技術者は、これまでもいろいろな場面で苦難を乗り越えてきました。

頑張りましょう。全国民がこの現実を直視して、目標達成に努力しましょう。     目次へ