2004.6.16

ジジーの情け


                                                               増田 次郎

銀杏の特別インタービュー、ポーランド大使館訪問の記事書きに追われ、語り部ジジー

の原稿が遅れました。ご勘弁下さい。


さてカラスのなかない日はあっても、新聞、テレビに三菱自動車工業の記事が出ていな

い日はありません。大変なことになったものです。

策を弄するものは、策に溺れると申します。

気の毒なのは一般従業員、下請、そして販売店の人々、そしてその家族の人々や工場近

隣の商店の方々。何も罪のないこの方たちのことを考えると、ほどほどのところで勘弁

してあげられないかと思います。


私は「お客様に嘘をついたことがなかった」とは決して申しません。

現場で大変なミスをしてしまった。何たることだと怒っても仕方がない。

謝るのは責任者の仕事です。

代理店は「増田さんは謝りっぷりがいいから是非来て下さい」と言います。

何かミス発生の原因と再発防止対策を、お客様が納得できるように説明しなければなら

ない。しかし余りに下らない原因なので、本当のことが言えないこともありました。

その辛さ。

お客様にお詫びに参上してご説明する。

顔を見れば「この野郎、嘘をついているな」と一目でわかる。

お客様の部長が「増田さんがそういわれるなら了解しましょう。再発しないように以後

よろしくお願いします」と言われたことがあります。

武士の情けとはこのことでしょう。

平身低頭頭を下げて冷や汗を流しながら工場に帰りました。

本当に有り難いことでした。

とにかく嘘をついてはいけません。

大体嘘でだまされるような人はこの世にいないのです。

世の中で一番大切なのは信用です。

一年に一度だけしか来ないお祭りの悪質露天商ではあるまいし、嘘をついてばかりいれ

ば誰も信用してくれなくなる。そんなことは誰でも知っているのに、ついつい落とし穴

に落ちる。人間の弱さですね。

武士の情けにお応えする機会はただ一つ。

「納期がぎりぎりなので何とか頼む」と言われたときに頑張りました。

私のような余り有能でない男に責任者が曲がりなりにも勤まったのはお客様のお陰です。

今でも感謝しています。


ところで三菱自工の幹部はどうしてこんな見え透いた落とし穴にはまったのでしょうか。

いい年して何故と言いたくなるのは私だけでしょうか。

しかし責任のある幹部は別にして、今回のことに全く責任のない人々が路頭に迷うのは

何とも気の毒です。自動車の運転免許すら持たない私には何もできませんが、死にかけ

ている馬にむち打つのはやめて、八方ふさがりの三菱自工に何とか救いの手を差し伸べ

てやって頂けないかと思う次第です。                                目次へ