2003.6.3
思い当たる節‥
増田 次郎さんより
入れ歯になって悲しいことの第一は、音声不明瞭になり「もごもご」することであります。ある後輩に現在の職業を問われ、翻訳屋だと答えたところ、「こんにゃく屋とは珍しいご商売」と感心され、「こんにゃく屋なんて商売があるか。この馬鹿者」と絶叫したことがあります。(実は嘘)
年はとりたくてとったわけではないけれど、区役所の戸籍係は税金を取った上に年までとらせる。誠にけしくりからんことでおじゃる。今まで四捨五入すると私は70才と言っていたけれど、ついにこの8月20日の誕生日で四捨五入すると80才になってしまうことになりました。悔しさに入れ歯で歯ぎしりする近頃であります。
隣のおばさんは年とともに超能力が付いてきて、毎朝午前3時ごろ廊下を「はい、はい」と返事をしながら歩きます。宇宙のどこかから電話がかかっているらしい。お陰でこちらはなかなか安眠できず大変です。年をとると大変ですね。
昔仙崖さんという禅宗の和尚様がおられました。
この方の墨跡は出光美術館に多数所蔵されています。
その中に「古人の歌」という軸がありました。増田流現代語訳をご紹介します。
「しわが寄る、ほくろが出ける、腰曲がる、頭が禿げる、ひげ白くなる。
手は震う、足はよろつく、歯は抜ける、耳は聞こえず、目はうとくなる。
身に添うは、頭巾、襟巻き、杖、めがね、(湯)たんぽ、温石、溲瓶、孫の手。
聞きたがる、死にとむながる、淋しがる、心は曲がる、欲深くなる。
くどくなる、気短になる、愚痴になる、出しゃばりたがる、世話焼きたがる。
またしても同じ話に、子を誉める、達者自慢に人は嫌がる」
思い当たる節大いにあります。でもちいとも直らないのは困ったことです。
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