2011.12.19
冬来りなば、落ち葉掃き
「今年はおかしいな」ロビンじいさんが庭先の紅葉を見上げた。
じいさんの家のミニチュア・ダックスフンドのロビン君は冬の日差しの中でしっぽを振って私を見た。
「おい、何だよ、元気か」わが家のワンコにロビンじいさんは、いつも声をかけてくれる。
私も「ロビン君、おはよう」と同じようにあいさつする。犬つながりの会話である。
ロビンじいさんは、小さなシャベルを左手に持ち、のんびり歩く。そしてのどかにゆったり話す。
「もみじの音はいいんだよな。今年はおかしいんだよ。ろくに紅葉もしないで枯れちゃったけど、これがまた
落ちねえんだよ」とじいさんは首をかしげた。この朴訥なじいさん、実に風流なじいさんでもあったのだ。
「もみじの落ち葉はいい音なんだよ」。ロビンじいさんは、もみじの枯れ葉は、他のと違う音がすると言うのだ。
もみじの枯れ葉はふぁーっと軽い。落ちる時に音がするのと聞き返したら「いいや」とじいさん。
もみじが落ちて重なって、その落ち葉の上を歩く時、独特の音がするそうなのだ。
へぇ〜、もみじの音って違うんだと感心し、新しい発見をしたような何だか得した気分になった。
毎年、仕事で落ち葉掃除がある。残念ながら9月から足腰が不調な私は、今年の落ち葉掃除の出番が無い。
昨年のこと。桜の落ち葉を集めたら、桜餅の香りがするのに驚いた。落ち葉にも匂いがあるのだ。
落ち葉掃除とは、夏の日差しを避け、空気を浄化させ、そんな自然の恵みを与えてくれる木々への礼でもある。
とにかく、例年やっていることをやらないのは実に寂しい。
家の近くの公園で、近隣の人々が集まって年内最後の落ち葉掃きをしていた。
「まいっちゃうな。ホームレスのゴミも片づけなくちゃならないなんて」。毎回掃除に参加している知り合
いの男性が私に話した。ホームレスの使った濡れた布団や、汚れた生活用品も片づけているのだ。
「でもホームレスも寒いのに気の毒ね」と私が言うと、掃除をしている彼はとんでもないという顔をした。
「税金を納めるわけでなし、片づける訳でなし…。ちゃっかり生活保護をもらっているのかも…。
何でやつらのゴミをおれが片付けなくちゃならないの?」と彼はぼやいた。
「俺らは高い税金を払い、年金はあてにならないし…」と、話が進めば進むほど政治批判となる。
「おーい、こっちにまだあるよ!」と、仲間を呼ぶ。そして、またまたせっせと落ち葉掃きに忙しい。
冬支度の木々たちの下で、人々が話し、そして思う。
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