2011.12.8
逆オレだったら…?
「わたし、大変だったの」Yさんがおばさんに話す。
もうちょっとのところでオレオレ詐欺にやられるところだったというのだ。
「おばさん元気?」と、電話が掛って来た。てっきり甥っこと勘違いしたYさん。
「Sちゃん?」思わず自分から甥っこの名前を呼んだのだ。
「そう、Sだよ!」。明日、仕事でそっちの方に行くから、おばさんの家に寄ると言うではないか。
「お土産、何がいい?」甥っこが聞いてきた。家に来るのにお土産なんていらないと返事をしたら、
甥っこは、そうは行かないよ、カステラを持って行くからと礼儀正しい。それがまた嬉しくなったYさん。
その“甥っこ”と、電話であれこれ長話をしたという。
その晩、Yさんはご主人に甥が来ると話した。お酒が好きな甥が来るなら土産にお酒を持たそうではないかと
いう話になり、わざわざ酒を買いに行ったそうだ。
翌日の早朝“甥っこ”から電話が入った。
仕事で急にお金が必要になったので150万円貸してくれないかというのだ。
10時までに振り込まないといけないのでそれまでに取りに来ると言う。
「その日の3時までには、お金を返すと言うのよ」。
とにかく間に合わせなければと思い、Yさんは、急いで銀行に向かったそうだ。
電話の“甥っこ”は、銀行で一度に引き出すと怪しまれるからこうしてとか、親戚の誰にも言わないでとか、
後で思えば変な話なのだが、その時は疑わなかったそうだ。
Yさん、甥っこのために、預金のある銀行をあちこち回って150万円を用意し甥っこが来るのを待った。
道路が混んでいて遅れると電話が入った。時計を見れば10時を過ぎていた。あれっ、とは思ったが待った。
もうすぐ着くような電話が入ったので、表に出て甥っこを迎えようとしたYさん。
家の近くでタクシーが止まった。知らない男が出て来た。土産も持っていない。おかしい。
ここでYさん、変だと思った。そしてYさん、家に入り鍵を閉めた。そして隣家の人に助けを求めた。
案の定、またまた電話が掛ってきた。「今、いないよ」近所の人が代わって電話で答えた。
そしてそのまた隣家の人が警察に通報した。
その“甥っこ”は、しばらく家の近で待機していたが、勘づいたのか警察が来る前に居なくなったという。
身近な人のオレオレ詐欺話に「へぇ〜」と驚き、ことの次第に安堵するおばさん。
この話、聞く人誰もが150万円、すぐ用意したことにこれまた驚くのである。
この話を聞いたわが亭主は「逆オレ、やってみたら」と提案をしてきた。
逆オレ?
亭主曰く、「お父さんが大手術するのでお金が必要になったから、お金振り込んでちょうだい」と、息子たち
に電話をしてみたらというのだ。
さて、逆オレは成りうるか…。いささか疑問なり。
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