2011.1.1
賀状拝見



年の始め、ゆっくり年賀状を見るのは楽しみである。元旦に着くには、あわただしい年の瀬に書いたことになる。

昔は手書きで一枚一枚、宛先を確認し、差し出す相手の顔を思い浮かべながら書いたものである。

今日び事情は大変わり、パソコンで宛名や通信面を一気に仕上げることができる。

パソコンだと通信面も手書きやプリントごっこのように一枚一枚仕上げる手間はない。しかし、たやすくできる

だけにアイデアとセンスが物を言う。さて、さて、拝見…。

ユーモアたっぷり伝える文章あり、腕自慢の写真あり、家族近況写真など、どれもみな私に幸せを運んでくれる。

しかし、たとえありきたりの年賀状であっても、それはそれで、その人なりの味があり、いいものなのである。

今は亡き私の父は、もちろん手書き派。達筆なのはいいとして賀状を書く姿は事務的であり実に滑稽でもあった。

昨年届いた年賀状を右側に置き、それを一枚一枚めくっては、まだ角の立った年賀ハガキに万年筆で淡々と、かつ

迅速に書き損じなく宛名面を仕上げる。表面を全部書いたところで一息つき、今度は裏面にうつる。

「謹賀新年」と、大ぶりに書き、その横に「旧年中はお世話になりました。本年もよろしくお願いします」と、

やや小ぶりに毎年同じ文句を連ねる。一気に書き終えると郵便局に赴き、暮れになると置いてある干支のゴム印を

トントン押し、そのまま投函して来るのだ。

こんな味もそっけもない賀状を、心がこもっていないと母はけなしたが、賀状は父任せなのだから仕方がない。

せっかちな父である故に、年賀郵便の受付より早く投函し、師走の最中、賀状が届いてしまうことも間々あった。

それも父らしさの表れだったのかもしれない。 


ともあれ、今年は兎年。今年もあの方から来るかしら…、と、まだ届かぬ賀状を待つのも正月の楽しみなのだ。


                           これが私の年賀状
                                

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