2006.12月25日
お互いさま


「私、聞いてません」。電話口、店員の突っぱねる声が返ってきた。

そうは言っても、家に帰り包みを解いたら、200g1000円の格安のお茶が包みに入っていたのである。

欲しい商品を指差して確かに頼んだはずだ。店員が蔵出し煎茶ですねとにこやかに言ったのを覚えている。

この蔵出し煎茶なるパッケージの商品、200グラムで1000円のものと、100gで1000円のものと2種類あった。

200グラム1000円は特売品で、この日の看板商品でもあった。

試飲させ、この価格でこれ程のお茶はありませんよと主張している商品である。

飲んでみて、なるほどと納得した商品でもある。とにかくお茶は価格だけで判断するのが難しい。

200g1000円のお茶、これでこの味だ。となると同じ銘柄で倍の価格を付けているお茶の味は、相当いいもの

かも知れないと推測したわけである。


受け取った商品が間違ったていたとは言え、支払った代金が間違っていたわけで無し、特売のお茶も値段

の割りに美味しいのは承知済みで、いつもなら、まあいいかと済ませるところなのだが、この日は違った。

「取り替えて頂けますか」とあわてて電話を掛けたのだ。

そこで、「私、聞いてません」。100gで1000円のものとは聞いてないという返事が返ってきたのである。

これからお届けしましょうか、お茶無いんでしょ。強気な店員である。

無いと困るんでしょ。偉そうな口ぶりである。お茶の在庫はある、あるからあると答えた。

とにかく明日取りに行くとこちらも頑張った。

すると、明日は非番だから他の人に言っておきますとつっけんどんである。


普段使いなのだから200g1000円のお茶でもよさそうなものだが、これには許せない事情があったのだ。

先だって不動産屋からお歳暮にお茶を頂いた。毎年、焼き海苔の詰め合わせと決まっていたのにお茶のセッ

トに替わったのである。飲んでみれば、小学校時代、大きなやかんに入っていた、あのお茶の味である。

懐かしいかしいが美味しくない。いまどき贈答品に番茶はないだろうと思ってみるが、ここのところ下宿の

出入りも無く、しばらく不動産屋さんとは疎遠になっているからこんな程度なのかもしれないと考えた。

顔つなぎのためのお歳暮なら仕方あるまい。そのせいで普段使いのお茶はたくさんあるのだ。


電話での店員の対応に少々腹がたった。しかし、考えてみれば、200gの重さに気づかなかったこちらも

悪かった。頼み方もあいまいだったのかもしれないと少々反省した。


翌日、店頭。

昨日の店員は非番であったが、別の店員がこちらの用件を良く把握していた。

ご迷惑賭けました。非番の彼女からのメッセージを伝える店員。

店員は彼女から預かっていると、こちらの希望した商品を持ってきた。

それから…、これを渡すように頼まれました。と、小さな包みを差し出した。


そっと開けると、和菓子が2個入っていた。

心做しか和菓子がちょこんとお辞儀をしたように思えた。



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