2006.12月5日
“オバサン”たる所以なり



12月3日。いよいよ決戦のときが来た。目指すは御茶ノ水にある明治大学リバティタワー。

造園施工管理技師一級実地試験。一次の学科試験をパスしてから一ヶ月余りでこの試験が行われる。

「大丈夫!受かる!」亭主に晴れがましく見送られては、何としても凱歌をあげて帰りたい。

鉢巻、タスキこそ掛けていないが、♪勝って来るぞと勇ましく〜 気持ちはまさしくそれである。

天気は快晴、風は無く、勉強不完全なりとも、自分なりに納得し、この日体調の不可もなく、試験場へ向う

ことに何故か一抹の喜びを覚える。

竣工1998年9月。地上23階建の近代的な明治大学の校舎が試験会場である。


会場近く「回答試案を出します。タオルが入ってます!」と声を張り上げ何やら配布物を配っている。

日建学院の宣伝チラシである。通り行く人に数人のスタッフが必死に配っているのだ。

行く手前方、受け取った人の配布物にタオルを確認。

当然おばさんもタオル入りチラシを貰えると確信していた。

えっ、何で。おばさんに誰一人それを渡そうとしないのだ。手を伸ばし頂きたいと意思表示をすれば、

「これは実地試験を受けに来た方に…」と言い訳をし、まったくチラシセットをくれようとしない。

短時間に配り終えるために人を選ばず、ひたすら配っている様子なのにである。

試験場の前を何気なく通り過ぎる人にも配っているではないか。

とにかく、どういう根拠で配っているのか疑問である。

どうやらチラシセットを配る彼等に、単にタオルが欲しいおばさんと思われたようだ。

タオル一本のことである。あきらめようと会場入り口へ向った。


何でも欲しがるオバサン、若者が考えそうなことである。

そういうオバサンは確かに多い。仕方が無いかと思いつつも何故か割り切れない。

試験を受けに来た者がタオルを貰えなくて、ただの通行人が貰えるっていうのが気に入らない。

とにもかくにも、おばさんは回答試案が欲しい該当者であることに間違いないのだ。

やっぱり言わなくちゃ。踵を返したおばさん。

あの人なら、分かるだろう。チラシ配りの若者たちをしきっている年配のあの人だ。

その人の居るところまでバックし、意を決し「それ下さい」と催促した。

すると、「私は声を挙げているだけなもんで。これはサンプルで…」と、その彼は困り顔で答え、あちらで

配っておりますからと若者たちを指差した。

「回答試案を出します!」あの配る声は先刻承知である。

もう一度、彼等に当たってみるかとそちらへ向えば、すでにタオル入りのチラシセットはあらず。

配っているのはチラシのみ。


タオルが無ければ貰う必要なし。 おばさんは気持ちを切り替え、会場入り口へ向った。

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