2006.9月21日
無難薬



わが家の薬箱、常備薬の中で一番鮮度を誇っているのは頭痛薬である。

無くなるとすぐに補充するという具合だが、今は一週間程前馴染みの薬局で買ってきたものが開封して入っ

ている。薬剤師である女店主が、ちょっと変えてみたらと薦めてくれたものである。

胃に優しいものということが条件となると選択範囲が狭まるようで、女店主はこちらと一緒に悩みながら、

これならどうかしらと成分表を見る具合である。女店主もこちらの性格を充分心得ていて、常備薬が飽き

て来た頃、これ試してみたらと話を持ちかけてくる。 馴染みの店とは、あうんの呼吸で成り立つものなのだ。

薦めてくれたのは漢方処方の顆粒であった。


頭痛再来? 新しい薬を試し見る格好のチャンスである。

この薬効くかしら…、期待感がみなぎる。

飲んで30分が経過した。薬アレルギーがあるので合わなければすぐさま体に変化が起こる。

どうやら体には無難なようだが、効き目あったのか無かったのかイマイチ分からない。

薬を飲んで痛くないということは、薬が効いたと言えそうなものだが、そうとも言えない事情がある。

というのも、頭痛シグナルをいち早く感じ、頭痛に先行して薬を飲むと頭痛を回避できることがある。

この場合、頭痛そのものが予測であって、回避したことも推測である。

先行頓服のこの日にあっては、本頭痛だったのか、はたまた空振りだったかは定かではないのだ。

それから二日後、娘が本剤を飲んだ。

薬を替えてどうかと聞けば、痛みが強すぎてどれを飲んでも同じと返事が返ってきた。


風邪薬の常備薬が無くなった。夕餉の支度の帰り道、あの薬局へ立ち寄った。

最近愛用している風邪薬を手にすると、先日購入した薬が目に入った。

「この頭痛薬、この間買ったのだけど、あまり効かなかったわ」男性薬剤師に不満をもらした。

と、彼、不思議そうに曰く、「お客さん、それ腰痛、神経痛に効くお薬ですけど…」。

そこへ女店主薬剤師登場、自信を以って平然として曰く、

「この薬でいいのよ。同じものだと直慣れて効かなくなっちゃうから」。

どれも同じと言わんばかりの顔をした。


常備薬は無難薬。安心以って薬と為す。
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