2006.7月24日
これが政策



高齢者にやさしい社会づくり、大方これが政策のキャッチフレーズである。

昨年、介護保険の申請やらで区役所に度々足を運んだおばさん。

高齢者支援課、年老いた父に変わっての相談だ。聞きたいことは山とある。

ちょっと聞きたいこともその窓口だけでは済まないのがお役所、これは9番窓口、これは10番窓口、

これは市民税課で聞いてといった具合なのである。

福祉に限らず、何でも申請しなければ応じられないというのが役所の習い。

「どうなさいましたか」相談員は親切に対応してくれるが、思うようにいかないのが制度の常である。

とにかく、聞いて当たって、恩恵ある制度が適用されるかどうかの話である。



母の入院時、市県民税を払っていなければ減免対象となると病院のケースワーカーが教えてくれた。

減免対象者であると医療保険では入院時の食費が減額となる。介護保険では室料と食費が減額だ。

年金生活の父に母の介護費は容易でない。少しでも安くなるならばと役所の窓口に出向いたおばさん。

現役時代の薄給が人生の最後まで付きまとう厚生年金支給額。

コンピューターに映し出された父の所得額を見て、

「低額所得者か、これじゃ大変でしょ。待って、すぐ減免の証明書だしますから」。

所員は減免の証明書を発行してくれた。


あれから、一年。制度が変わった。

介護保険は見直され、老齢者控除は無くなり、税額の算定方法も変わった。

母の入院は続く。老世帯、年金だけが頼りの父、その年金額も減少したと嘆く。

制度の改正で、父は今年から市県民税の対象者となった。

年金額が減少した上に市県民税まで払うというダブルパンチをくらった父。

ともあれ課税所帯となると、減免の対象ではなくなる。

変わらぬ年金額、出来たら減免の対象者であって欲しいと、かすかな望みを持って役所へ出向いた。

「あなたのお父さん、高額所得者だから減免にはなりませんよ」と所員。

新制度、所得額による課税徴収ラインをちょっと下げたのだという。

「税金は広く皆さんからご協力を頂こうということで…」

父の微妙な年金額に所員も本当にお気の毒といった具合で話した。

市県民税4000円也。

たかが4000円と思う無かれ、課税か非課税かで公的待遇は大きく変わるのである。


同じ年金額、一年前は低額所得者、今年は高額所得者、これが政策である。
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