2006.7月16日
予期せぬ出来事




MRIと脳波検査の結果を聞きに行く。試験でも、宝くじでも結果が分からなければ話にならない。

当たりと出るか、外れと出るか…。この場合、外れに越したことはないのだが、めまいが起こる原因の

当たりは付けてくれという気持ちで耳鼻科の窓口へ診察券を出した。

聴力検査をしてから診察ということなので、聴力検査室へ。


「ピッ、ピッ…、トントン、ザーッザーッ、色んな音が聞こえてきますので、音が聞こえた所で手元の

ボタンを押して下さい」と検査士は説明した。

亭主の声が聞き取り難い時がままある。お前はちゃんと聞いていないだの、耳が悪いと亭主は言う。

亭主の言うように聞いていないのか、聞こえないのか、聞こうとしないのか、分からぬところである。


右耳から検査は始まった。

まだ聞こえない、まだ聞こえない、おや、遠くからかすかにトットッと、音が聞こえてきた気がする。

そこで急いでボタンを押した。音は確かに近づいて来た。やった! 早押しクイズの乗りである。

また音は消えて静かになった。次の音を待つ。じいっと聞き入れば微かな音も逃すまい、と思った。

と、予期せぬ出来事が起こった。なんと、こともあろうにお腹が鳴り始めたのである。

ク〜ゴニョゴニョゴニョ、グニュグニュ〜。お腹の鳴りものは静かな部屋にこだました。



腹鳴りは胃腸神経症と言うようだ。気にすると余計鳴るから始末が悪い。

こちらはお腹の鳴り具合を気にしつつ、ヘッドホーンにて検査音を聞いているのだが、静かなる狭い

部屋の中、検査士はおばさんの腹鳴りの音だけを鑑賞しているという具合なのである。



とにかく、あの腹鳴りは他人に聞こえるのである。あれは授業参観の時だった。

グ〜、ゴニョゴニョ、グ〜、グニュグニュ〜。子どもたちが振り返った。周りの父兄がこちらを見た。

板書をしていた先生もこちらを見た。誰も笑いはしなかったが、極まりが悪かった。

入学式でも鳴った、卒業式でも鳴った。お茶会でも鳴った。

おばさんのお腹は前触れも無しに、静まり返っているその場で、一際目立つ席で鳴るのである。


聴力検査、集中力など何処へやら。腹鳴りの兆しに不安を抱き、腹鳴りの音に落胆する。

それなのに検査が終ったとたん、お腹が鳴らなくなるから癪である。

「聴力、問題はありません」検査士は笑顔で告げた。

診察室。過度のストレスで血流が悪くなり回転性のめまいが起ったのだと説明された。


集中力半減にして聴力に問題無し。さて、何故に亭主の声は聞こえない?  

                                                                            目次へ