2005.11月6日
汗蒸幕のアジュマたち(ソウル旅行記)




韓国式サウナ、汗蒸幕(ハンジュンマッ)にトライした。

夜間料金は割増しという。ここで一風呂浴びて、オンドル部屋で一晩明かす人も多いとか。

繁華街では入場料だけでも20,000ウォンという料金が一般的なようだ。

観光客相手というより、地元庶民の憩いの場を案内されたおばさんたち。

ここは夜間でもアカ擦り込みで22,000ウォンと超格安。

ロッカーキーを受け取り、タオルと浴衣を受け取ると、先客たちがこちらを見る。

そう、銭湯でよそ者が入って来たという時のあの感じで見るのである。



湯船につかったところで桶を取り、体を洗い始めたおばさんたち。

「ちょっと、何してるの!」同行のソウル出身、韓国語講師が驚きの声をあげた。

アカ擦りとは、アカ擦りのみならず、全身をくまなく他人に洗ってもらうことなのだ。

サウナで汗を出し、湯船に浸かってまたサウナに入る。

こうすると、よくアカが出るのだと教えられた。つまり、アカが出るよう、よくふやかすのである。


風呂場の入り口付近に3台並ぶビニールベッド。

「えっ、ここで…、まさか!」。とにかくオープン、何もさえぎるものが無いアカ擦り台。

ちょっとためらい、止めようかとも思ったが、怖いもの見たさもある。

アカすり台に乗り全身をさらけ出したとたん、おばさんはまな板の鯉になった。

羞恥心とは案外もろいものである。

<2枚でも3枚でも勝手に下ろせ!>すっかり魚の心境になっていた。

アジュマ(韓国のおばさん)が、力強く体を洗い始めた。

アカ擦り台で考えた。魚がうろこを剥がされる時はこんな具合なのか。

上下、ひっくり返えすということは、こんなに手荒なことなのか。

50肩をも考えず腕をひっぱり洗う時に至っては、魚の頭を落とす時の無情さえ感じた。


3つの台。3人の体を洗う水着姿の3人のアジュマたち。体力の要る仕事である。

洗い方が強いか、痛いかどうか聞くわけでなし、感情が入らない分、爽快でもある。

彼女たちは仲間と話しながらも、手を休めることなく全身からアカを出し続ける。

日常のことか、聞いたうわさか、頭の上でことばがポンポン飛びまくる。

ひょっとしたら貧弱な私の体を見て、何を食べているのか話しているのかも知れない。

とにかく言葉が分からないというのもいいものだ。ことばの響きだけが心地よく伝わる。

「気持ちよかった、カムサハムニダ」。

こちらの言葉にアジュマたちは笑顔で答え、はや次の客を受け入れる準備に取り掛かった。


汗蒸幕。アカを落とした分、アジュマたちのパワーが付いてきた。

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