2005.7月25日
張りが無くても



ノーマン・ロックウェル調の絵柄が気に入っている手提げのバッグ。

普段使い良し、外出時良し、大きからず小さからず、絵柄にして服を選ばす。

裏生地がオレンジ色と奇抜で、中身が一目瞭然なのだ。

おしゃれで粋で取り出しやすいお利口さんバッグ。

「こればっかり使っちゃう」とご自慢のバックなのである。

購入時、白地が汚れやすいかと気になったが、汚れが絵に加担して、またいいのである。

使ってまる3年。角っこが黒ずんで、手提げ部分の色も剥げ、下地の色がテカリ始めている。

愛用して愛用して、馴染んで馴染んで、ここまで来たといった具合なのだ。

ところが、文句無しのこのバッグ、この頃按配が悪くなってきた。

バッグの中身がうまく取り出せない。大振りの財布を取り出そうにも裏地が邪魔になる。

よくよく見れば、張りがなくなった裏地が、内側にたるんできたからだ。

表地から解放された裏地が、内側で自由気ままに暴れ出す。

見れば内ポケットの縫い目も裂け始めた。裏地も手垢で相当貫禄を増している。

使いやすいのが身上のバッグ。

ここが捨て時かも知れないが、気に入っているから困る。

裏地が派手に裂ければ見切りもつくだろうと、裂け目を思いっきり引っ張った。

驚く無かれ傷口はちっとも広がらない。

あまりの頑丈さに敬意を表し、壊すどころか裂け目を繕ってしまった。

繕いがまた愛着になる。

が、やはり捨てようかと悩むおばさんに、「まだいいじゃないか」と亭主。

何を隠そう、亭主もまたこのバッグの絵柄が気に入っているのだ。


このバッグを眺めつつ、鏡を見れば繕いきれぬ我が姿あり。

張りがなくても、よたっても、「愛されなくては…」と思うのでありました。


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