2003. 4月26日
優柔不断に決め手なし


「好きな数字ってありますか‥?」

亭主がちょっと部屋から出て行ったすきにナンバーズ宝くじを机に出しながら職人のヒデちゃん

がおばさんに聞いてきた。

数字なんぞに好き嫌いはないが、こう改まって聞かれると、はたと考えてしまうおばさん。

結局当たりそうな数字を連想するのだが、どの数字もそれらしく、どの数字もうそっぽい。

「適当に書けば」としか返事のしようがない。

“適当”がなかなか思いつかなくて‥とヒデちゃん。

これなんかいいんじゃないと手元にあった缶ビールのバーコードを彼に見せた。


「バーコードだと‥」。バーコード派は以外に多いかもしれないと彼は悩むのだ。

電話番号、生年月日、おばさんの発想はこんなとこ。

そんな数字はとっくに使っているヒデちゃん。彼の狙いは欲無き欲。

そう、狙いをつけるとはずれそうに感じるところにあるのだ。

だから「好きな数字は‥?」と他力本願。とにかく無欲を装うわけ。

当たったら、賞金は分けてくれるのと質問するおばさんに、

「当たったら‥??」さてどうしようと早々悩むヒデちゃん。

「でも当たらないと‥。それには数字‥」。


「また、やってるのか」亭主の声にヒデちゃんあわててナンバーズを引っ込めた。

翌朝、テレビで「ナンバーズって悩むんですよ」とアナウンサーがちいさなコマを回した。

ルーレットになっていて数字のところで玉が止まる仕組み。

「こんなのもあるんですよ」もう一人のアナウンサーがやってみせた。

もう悩まなくて済みますねといくつかのグッズを紹介する。

なるほどこれは便利だとおばさん。

「あら、ヒデちゃんにもってこいじゃない」と亭主の顔を見た。

亭主曰く「どのグッズで決めたらいいかまた悩むよ」

‥然り。
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