2003. 4月12日
出前コーラス



「とにかく準備が大変なんだから」

「ボランティアって自分よがりのところあるもんね」

コーラス仲間のお茶タイム、しばらくぶりの出張コーラスとあって話しが弾む。

我らコーラス部隊、コンクールで競う程の気力もなし。

となると、発表の場は‥。

そうです、ターゲットは老人ホームと病院。


聞けば、慰問ボランティアがやってくる日は、受け入れ側は大忙しという。

そりゃそうだ。わが家だって、お客が来る日は、何やら朝からせわしない。

日常の仕事の他に、コーラスおばさんを迎えての舞台づくり、客席づくりが加わるこの日は、

てんやわんやなはず。「だから『やってあげてる』じゃ、いけないのよ。聴いていただくと思わ

なけりゃ」。事情通の一人が力説する。

なるほど、なるほどとおばさんたちはうなずいた。


<準備‥?そう言えばあの時>と以前訪れた特老ホームを思い出した。

窓ガラスにはスプレーで模様が書かれ、掲示板には花飾りがついている。

「きれい!」おばさんたちは室内を見回す。明るく広い施設での演奏予定時間は午後一時。

特別メニューなのか食後というのにケーキと紅茶のセッティングが始まった。

若い看護士たちが、お年寄りたちにミルクを入れてあげたり、砂糖を入れてあげたりとかいがい

しく動きまわる。施設のお年寄りと看護士たちスタッフでホールは満員。

この日ために、体調を整えたコーラス部隊、申し分のない観客数にやる気満々。

「♪若く明るい歌声に〜」ちっとも若くない歌声が響く。

受けをねらった懐かしのメロディに、なんとか会場は盛り上がった。

歌い終え「よかった、よかった」と控え室に用意されたお茶とお菓子をほお張る出前メンバー。

「風邪ひいて移しちゃまずいし、これで安心」なんて話しを交わし合う。「お茶足りますか?」

忙しい中、若い看護士が気をつかって聞いてきたっけ。

そんなことを思い出しながら事情通の話しに聞き入る。


「だから、患者もお年寄りもその日のために体調を整え、出迎えるわけよ」。

その時間ちゃんと聴いていられるように、全員体調を整えて待っているなんて考えもしなかった

おばさん。さては歌って帰るこの手のボランティアは、仕事を増やすだけなのかも‥。

とは言え単調な生活はボケを呼ぶ。時にはおばさんパワーの刺激剤も必要と思う次第。


出前コーラス

聴くも歌うも、体調を整えることに意義があるのです
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