2003. 4月1日
帝釈天参道に“粋”を見た
映画「男はつらいよ」の舞台となった帝釈天と参道を見ようと、柴又の駅に着いたのは午後5時
半を過ぎていた。駅前、カバンを持った寅さんのブロンズ像が「いよっ、よく来たな」と出迎え
る。ちょいと歩くと横断歩道の向こうは帝釈天参道だ。「うそっ、定休日?」何軒かの店は開い
ていたが、ほとんどの店はお休みのようす。
スクリーンでお馴染み「とらや」はここかと立ち止まり、シャッターの降りた店を見る。
閉まった店の奥でどんな会話が交わされているのか想像するおばさん。
しばし山田洋次気分。
低い2階建の家並、店先をこぎれいに整え連帯感のある参道の商店街は以外に短かった。
と、帝釈天の境内「ゴーン」と映画でもおなじみのあの鐘の音が鳴り響く。
鐘の音が合図なのか、わずかに開いていた店も片付け始めた。
定休日に来ては面白くない。次回のためにと店じまいを急ぐ店主に聞いた。
「えっ、定休日?そんなもんないよ」
参道の店はあらかた5時には閉まってしまうのだ。
「みんな開いていたよ」朝7時から開ける店もあるという。
早寝早起き、早仕舞い。そういや昔はそうだった。忘れていた生活の原風景が蘇る。
ゆうげの支度に忙しい主婦たちが柴又の駅前をせわしなく歩いている。
「労働者諸君、青年、早く家に帰えんなさいョ」寅さんはこんな町で生きていた。
盆や正月、お祭りでも特別営業時間はないらしい。
帝釈天にお参りし、参道商店街をUターン。
参道入り口近くに開いていた煎餅屋にさしかかる。
おばさんと亭主が通り過ぎるのを待って、せんべい屋が片付け始めた。
葛飾柴又、野暮な駅。寅さん流にふらっと来るのが似合う町。 目次へ