2003. 3月8日
♪何でだろう〜



「いらっしゃい」

ラーメン屋の元気よい店主の声が響く。

亭主と一緒にカウンターに座ると、

「お兄ちゃんは?お姉さんは?」と注文をとってるのは店主の奥さん。

ちょっと前までおばさんだって"お姉さん"って呼ばれていた。

気がつきゃ「奥さん‥」と呼ばれているおばさん。

妬みはしないが亭主は何故かいまだにお兄ちゃん。

♪何でだろう、何でだろう〜


そば好きの亭主のために、日夜おばさんはせっせとそばダネを集める。

朝はもっぱら日本そば。

昆布だしにカツオだし、きのこ、かまぼこ、伊達巻、天婦羅で仕立てる。

亭主の借りている駐車場の隣はそば屋。このそば屋がうまい天婦羅を売っている。

亭主がそば屋のオバサンと出会ったのは20代初め。

「あのオバサン俺等より相当年上だぞ」と亭主。

「お兄ちゃん元気?」とオバサンが聞くのも納得する。

「最近お兄さん見かけないけど‥」と中年に差し掛かっているそば屋の娘が話す。

えび天の値段が300円から200円と大幅に下がったせいか、近頃はえび天が一番先にはける。

夕方4時、店の前を覗くと100円の芋天とかき揚げがちょこっと残っていた。

お目当ては200円の大ぶりえび天か130円のいか天。

奥から手を横に振り振りオバサン登場。

「いやー、今ちょっと前に全部売れちゃったの。おばちゃん来ないねって娘と話してたとこ、

悪いね、お兄ちゃんによろしく」。

そば屋のオバサンからおばちゃんって呼ばれたおばさん。

くやしかぁないが亭主はここでもお兄ちゃん。

♪何でだろう、何でだろう〜
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