2003. 2月11日
絶対値、普通のオバサン



「辞めたら、出てくるなよ」と我が亭主。

かつて亭主もおばさんも都はるみの歌は好きだった。

唸り節から裏声に変わり、大げさなジェスチャーを見ると何となく気が晴れた。

「普通のオバサンになる」と言った彼女。「言ったことは全うせよ!」が亭主の主張。

テレビ誕生50年で懐かしいフィルムが流れた。紅白に出場した引退間際の都はるみ。

その時の司会者、鈴木健二が得意顔で話しまくる。

「都はるみさんにアンコールを歌ってもらうように仕向けなければならないでしょ、だからその

時間を作らなけりゃならないので‥」生放送のスリリングな一部始終をいかにも大変とばかりに

鈴木節でまくしたてる。

司会相手の女優さんは台詞を体で覚えるから台本を変えることが出来ないという彼。

「私がどうにかしなくちゃ」と秒刻みで先を読む苦労を自慢。

「あれとあれを削って行けば充分行けると、あの時点で思いましたよ」。

「スゴイ!」「さすが!」とヨイショする後輩司会者。

鈴木氏は普通のオジサンではない自分に酔っている。

都はるみが会場からの湧き上がるアンコールに泣いた。水前寺清子、八代亜紀など外野はもらい

泣き。今生の別れのように泣いている。

明日はわが身の芸能界、お声が掛からなけりゃ消えて行く。そうか、彼女たちは、普通のオバサ

ンになる日が恐いんだ。普通が嫌いなこの業界。あえて普通に挑む勇気に盛り上がる。

あの感動場面はなんだったのか‥5年後、彼女は「普通のオバサン」からUターン。

「休んだのが良かった」「もう辞めない」と歌っている。

考え方は充分普通のオバサン。


それにしてもモラルがない。普通じゃ出来ない、許されない。

そうか、役者は斬られても、次のドラマで生き返る、職場復帰なんて朝飯前なのだ。 目次へ