2003. 1月23日
お芋さん



おばさんはスピード料理に興味がある。グッチ祐三の早うまレシピはいい。

材料、作り方が簡単なのかって?

ノン、彼は教え上手なのである。

まず「塩、酒、葱、肉、魚」材料や調味料を気軽に呼びつける。

「絶対やっちゃダメなこと」と偉そうにしゃべるグッチだが、言葉の荒っぽさの中にも材料に対

する思いやりがある。

「ここを見逃しちゃダメ」とフライパンを見せるグッチ。

「見ててよ」。そう言われちゃ、フライパンの中で材料の卵は一世一代の芸をする。

「皿、皿取って」とアシスタントをせきたてる。

「ほら、うまそう」とほめられて皿に盛られた料理はつややかだ。

女性だって料理と同じ。ほめられりゃ綺麗になるってとおばさん。


料理家江上トミさんが活躍した時代は、やたら「お」を付けた。

お暑い時にはさっぱりしたお味がおよろしゅうございます。今日のお献立はお肉とお野菜、お魚

を使ったお汁もの」。と出来上がった器に手を添えながら愛想よく微笑んだ。

なんだか簡単な料理がレベルアップ。とにかく言葉の調味料の「お」に胸焼けがした。

グッチのように「お」無しでいいのだと思いながらも、お砂糖、お醤油の呼び方も捨てがたい良

さがあると一人うなずくおばさん。稲荷寿司よりお稲荷さん、お粥よりお粥さんて呼ぶのもいい

ものよ、なんて考えながらおばさんは天ぷら屋に出向いた。

「海老天2つと、イカ天1つ、お芋さんも1つね」。店員は身をこごめ、おばさんの注文した天

ぷらをパックに入れている。

「お芋は三個ですよね」店員は芋を挟んだ。(‥ん、お芋三?)

あわてておばさん「お芋一つ」と言直した。


注文に余分な敬語は使うべからず。
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