『夢の秤・色の秤』 吉川清子 作品集  美研インターナショナル刊

  救ってくれた 誰が?

  こわれた心を祝う人に

  今日は オブジェのカーニバル

  今日は オブジェのカーニバル


      
    「マイ・トレジア-II 」
      
       四行詩/中村文昭
2006年6月30日 第一版第一刷発行
         定価1300円+税


吉川清子の絵


中村 文昭

 リルケは、荒海で船が難破したとき、自分を救うのではなく、事物を最初に救うのが詩人だと言った。
 吉川清子の絵は、一貫して“事物を救う”ことへの限りない慈愛に満ちている。この画家は、セザンヌが造形した空間の歪み(多角的な視点)をよく体得しているだけでない。日本の北斉や広重らが愛した非遠近法(平面の美)を自在に取りいれている。また、この画家は、知性が過剰に絵画を支配することを嫌っているが、同時に、感情が過剰に絵画を呑みこむことに対しても抑制的である。
 感情に対しては知性の秤を、知性に対しては感情の秤を使って、この画家は、主観と客観の静かなハーモニーを造りあげる。
 画家吉川清子は、見えるものをとおし、見えないものを造形しようと、事物をはかり、色をはかり、人生とその夢をはかりつづけている。
(序文より)




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