『江古田文学』第66号

特集
団塊世代が読むドストエフスキー
第6回 江古田文学賞発表
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平成19年11月30日発行

編集人 中村文昭

編集発行
日本大学藝術学部 江古田文学会

発売 星雲社

定価980円+税・A5判430頁

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「中村文昭の詩空間 自画像集・肖像画集」連載中!

中右史子・林花子・田村一行・高橋文・チョルモン
の各詩作品がご覧になれます。

野木京子『ヒムル、割れた野原』を書評した、
クリハラ冉「その〈場所〉の名前」も掲載。

〈何処にもない場所〉を願いながらもそこを目指さず、
自らを変容させることを選んだ詩人の立姿を
丹念に追いかけた論考です。


◎表紙画 中村文昭 


-中村文昭の編集後記より-

 本年十月三十日から十一月五日までイタリア視察の短い旅(ミラノ、フィレンツェ、ボローニャ、ローマ、パレルモ)に出た。ある研究会でここ数年日本人の死生観を舞踏や即神仏などで研究してきたわけだが、縁あってイタリアのボローニャ大学に二〇〇二年大野一雄アーカイブが設立されたことを知り、是非表敬訪問したいと願っていたことが実現した。アーカイブの責任者は六十八歳の女性ロパ教授で、心よりの歓待をうけた。少女のように大野一雄舞踏との出会い・感動そして舞踏が世界に与えた現代的意義などを語るその人の芸術・人生・大学人としての情熱と誇り高さを実感し、たがいに交流をじっくりもつことを約束した。
 今回の視察のもう一つの目的は、イタリア人の死生観を知ることで、ローマとシシリア島パレルモの地下埋葬所(カタコンベ)を訪ね、いろいろなことを考えさせられた。
 私は長く″鰯の頭も信心から″といった市井の人々の信仰はかたく信じてきた。が、宗教という社会化された組織−−その歴史的発展や動向には合点できずにいた。地球上の生ける人々は信仰をもっている。しかし、それらが各々の文化的背景の下で権威的な「宗教」になり政治上の権力や富の亡者らと絡まって結果、民族・宗教戦争を今でも引き起こしている…。
「いのちはどこか祈りというコトバに似ている」。今回の経験がどう心に根をはるのかは定かではないが、よきものよき人に出会えたことは確かであるようだ。



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