竹内敏喜さんからのお手紙 2006.07.04


 先日は『夏の庭』ありがとうございました。「生きていた」という感覚を求めるからこその影への視線と、その場面を強烈に照らす夏の光が感じられました。「庭」から出て行きたいという欲望をどう受けとめるかがモチーフとも思われます。その内側にいることが、視覚的に、あるいは反響する音として、また夏独自の匂い、そして薬の味、そういった五感への意識で技法的にも自然に発揮されており、言葉がピンと立っているようです。影のような「私」は内向していき、他者としての父・母の立場を背後のドラマ性として原風景的に想起していくなかで、やがて「夏の坂」ほどに自己の生き方をみつめ直し、「遺言」のように生き方を選ぶこと。それは悲しい道のりです。 不一 2006.7.4  お互いにがんばりましょう。 竹内敏喜






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