第十七回 商法改正中間試案\ 資本減少手続の合理化関係および外国会社関係
  今回は中間試案の「資本減少手続の合理化」および「外国会社」についてその内容をご紹介します。



27 資本減少手続の合理化

(1) 資本滅少の決議における株主総会の決議事項を明確にするものとする。

(2) 債権者保護の観点から、資本滅少の際の公告事項及び通知事項を充実させるものとする。

(コメント)
  現行法上、資本減少の決議をする株主総会における決議事項として明記されているのは「減資ノ方法」だけであって、決議事項の全体像が不明確かつ不十分です。また、資本減少の際の債権者保護手続における公告事項等も必ずしも明確ではなく、実務上は、減資を行うことのみしか公告等がされていませんが、これは債権者の利益保護の観点から問題があるとの指摘がされていました。そこで、中間試案では、株主および会社債権者の保護の観点から、これらの事項の明確化および充実化を図ることとしようとするものです。

28 外国会社 外国会社の日本における代表者


(1)外国会社の日本における代表者

(イ) 外国会社が日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならないものとする。

(ロ) (イ)に規定する場合においては、外国会社は、日本に成立する同種の会社又は最もこれに類似するものの設立の登記及び公告の規定が定めるところに従い、登記及び公告をしなければならないものとする。

(ハ) (ロ)の登記にあっては、会社設立の準拠法並びに日本における代表者の氏名及び住所をも登記及び公告しなければならないものとする。

(ニ) 外国会社は、最終の貸借対照表若しくはその準拠法において最もこれに類似するもの又はその要旨を公告しなければならないものとする。

(ホ) 第78条(代表社員の権限)の規定は、外国会社の代表者に準用するものとする。

(へ) 第100条(合併の債権者保護手続)の規定は、(ロ)の登記の抹消をする場合に準用するものとする。

(2) 日本における代表者の責任

(イ) 代表者の責任

(a)日本にある外国会社の財産をもってその債務を完済することができないときは、日本における代表者は、連帯してその弁済の責めに任ずるものとする。

(b)日本にある財産に対する強制執行がその効を奏しないときも、(a)と同様と するものとする。

(c)(b)の規定は、日本における代表者が外国会社に弁済の資力があり、かつ、執行の容易であることを証明したときは、適用しないものとする。

(ロ) 代表者の抗弁

(a)日本における代表者は、外国会社に属する抗弁をもって、外国会社の債権者に対抗することができるものとする。

(b)外国会社がその債権者に対し相殺権、取消権又は解除権を有する場合においては、日本における代表者は、その者に対し、債務の履行を拒むことができるものとする。

(ハ) 退任した代表者の責任

(a)日本における代表者でなくなった者は、(1)の(ハ)の登記について変更の登記又はその抹消をする前に生じた外国会社の債務につき責任を負うものとする。

(b)(a)の責任は、(a)の変更の登記又は抹消の後2年内に請求又は請求の予告をしない外国会社の債権者に対しては、変更の登記又は抹消の後2年を経遇した時に消滅するものとする。

(3) 裁判所による取引中止命令

裁判所は、左の場合においては、法務大臣又は株主、債権者その他の利害関係人の請求により、外国会社が日本において取引をすることを止めるべきことを命ずることができるものとする。

(イ) 営業の開始が不法の目的をもってされたとき。

(ロ) (1)の(ロ)の登記をした後、正当の事由なく、1年内に営業を開始せず、若しくは1年以上営業を休止したとき又は支払を停止したとき。

(ハ) 外国会社の代表者その他業務を執行する者が、法務大臣より書面による警告を受けたにもかかわらず、法令に定める会社の権限を踰越し、若しくは濫用する行為又は刑罰法令に違反する行為を継続又は反覆したとき。

(4) 日本における財産の清算開始命令

第485条第1項及び第2項の規定は、外国会社がその営業を止めた場合に準用するものとする。

(コメント)
 外国会社に関する現行の第479条以下の規定について、外国会社が我が国において継続的に取引を行うときには営業所を設けなくてはならないとしている規制が厳格すぎるとの指摘があります。そこで、中間試案では、この営業所の設置義務を廃止し、これに代わる国内債権者の保護措置として、日本における代表者に第80条、第81条および第93条に倣った責任を負わせることとし、また、営業所の設置義務の廃止に伴う関連規定の整備をすることとしています。なお、この点については、経団連から、内国会社に比べて外国会社に過重責任を負担させるものとして、反対の意見が提出されています。  





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