19 商法特例法上の大会社による監査委員会、指名委員会及び報酬委員会(以下「各種委員会」という。)制度並びに執行役制度の導入
(1) 各種委員会制度及び執行役制度の採用
(イ) 大会社は、定款をもって、各種委員会 及び執行役を置くことを定めることができるものとする(以下、この定款の定め をした大会社を19において「会社」という。)。
(ロ) (イ)の場合においては、会社は、監査役を置くことを要しないものとする。
(ハ) (イ)の場合においては、次の事項を登記しなければならないものとする。
(a)各種委員会及び執行役を置くことを定めたときは、その規定
(b)各種委員会を組織する取締役の氏名
(コメント)
現在の取締役会制度については、実務上、業務執行を監督すべき者が同時に業務の執行を行っていること、取締役の人数が増えすぎて機動性を欠くこと、従業員兼務取締役が大半となったため、代表取締役の実質的な支配下に置かれていること等の問題点が指摘されています。中間試案では、(1)取締役会の監督機能を強化するため、業務執行と監督の分離を図る必要があること、(2)業務執行の効率性を高めるためには、執行役への権限委譲を図る必要があること、(3)取締役会の独立性を高めるため、社外取締役を中心に構成される各種委員会を設置するのが相当であること等の理由から、大会社は、定款で、各種委員会と執行役(現在、商法上の規定がないにかかわらず、実務上置かれている「執行役員」を商法上明確に規定したものです。)を置くことができるとしました。また、この場合、監査委員会が現行の監査役の職務を行うことになるため、監査役を置くことを要しないものとしています。この部分については、経団連から、3つの委員会と執行役を一体の制度とすることは、あまりに硬直的であるとして反対意見が提出されています。
(2) 各種委員会制度及び執行役制度の内容
(イ) 各種委員会制度
(a)各種委員会の設置
(i)会社は、取締役会の決議をもって、各種委員会を組織する取締役を定めなければならないものとする。
(ii)各種委員会を組織する取締役は、3人以上で、そのうち過半数は、その就任の前、会社若しくはその子会社の執行役若しくは支配人その他の使用人又はその子会社の業務を執行する取締役でなかった者(以下「社外取締役」という。)でなければならないものとする。
(iii)社外取締役及び監査委員会を組織する取締役であって社外取締役でない者は、会社若しくはその子会社の執行役若しくは支配人その他の使用人又はその子会社の業務を執行する取締役を兼ねることができないものとする。
(b)各種委員会の権限
監査委員会
(i) 監査委員会は、執行役の職務の執行を監査するものとする。
(ii) 会社が執行役に対し、又は執行役が会社に対し訴えを提起する場合においては、その訴えについては、監査委員会を組織する取締役が会社を代表するものとする。会社が(2)の(ロ)の(a)の(v)において準用する第267条第1項の請求を受けるについても、同様とするものとする。
指名委員会
指名委員会は、取締役の選任に関する議案の内容を決定するものとする。
報酬委員会
報酬委員会は、次の事項を決定するものとする。
(i) 取締役又は執行役が受ける報酬に関する方針
(ii) 各取締役又は各執行役が受ける報酬((iii)に掲げるものを除く。)の額
(iii) 取締役又は執行役の報酬として、5の(10)の(ロ)の決議のある新株引受権又は株式の時価、利益の額その他の数値に基づいて算定される額に相当する金銭その他の財産を取得できることとなる権利を与えるべき場合においては、各取締役又は各執行役についてその内容
各種委員会の運営
(i)各種委員会は、その職務遂行の状況を取締役会に随時報告しなければならないものとする。
(ii)取締役は、各種委員会の求めに応じ、各種委員会に出席し、意見を述べることができるものとする。
(iii)第259条から第259条ノ3まで、第260条ノ2及び第260条ノ4(取締役会)の規定は、各種委員会に準用するものとする。
(コメント)
中間試案では、訴訟委員会を設けるかどうかについては、今後検討することとしています。
(ロ) 執行役制度
(a)執行役
(i)執行役は、取締役会において、選任するものとする。
(ii)執行役は、取締役会が委託した会社の業務執行を決定するものとする(執行役を兼任しない「業務担当取締役」は、認めない趣旨である。)。
(コメント)
中間試案では、取締役会に権限を残すべき個別事項は、計算書類の承認、株主総会の招集の決定、取締役会を招集すべき取締役の決定、競業行為の承認、利益相反取引の承認、中間配当の決定及び譲渡制限株式の譲渡承認としています。また、それ以外のもの(新株発行、社債募集、額面・無額面株式の転換、株式分割の決定、第260条第2項の個別事項等)については経営の効率化の観点から執行役に決定させることができるものとすべかどうかについて今後検討するとしています。
(iii)執行役は、いつでも、取締役会の決議をもって、解任することができるものとする。ただし、任期の定めがある場合において、正当の事由なくして、その任期の満了前にこれを解任したときは、その執行役は、会社に対して、解任によって生じた損害の賠償を請求することができるものとする。
(iv)執行役がその任務を怠ったことにより会社に損害を生じさせたときは、その執行役は、会社に対し連帯して損害賠償の責めに任ずるものとする。執行役が第294条ノ2第1項の規定に違反して財産上の利益を供与したときは、その執行役は、会社に対し供与した利益の価額を賠償する責めに任ずるものとする。これらの執行役の責任は、総株主の同意がなければ免除することができないものとする。
(v)第254条第2項及び第3項、第254条ノ2、第254ノ3、第256条第1項、第264条、第265条、第266条ノ3第1項、第267条から第268条ノ3まで、第271条並びに第274条ノ2の規定(取締役)は、執行役に準用するものとする。
(b)代表執行役
(i)会社は、取締役会の決議をもって、会社を代表すべき執行役を定めなければならないものとする。
(ii)(i)の場合においては、数人の代表執行役が共同して会社を代表すべきことを定めることができるものとする。
(iii)第39条第2項(共同支配人)、第78条(代表社員の権限)及び第258条(欠員)の規定は、代表執行役に準用するものとする。
(iv)社長、副社長、その他会社を代表する権限を有するものと認めるべき名称を付した執行役(表見執行役)のした行為については、会社は、その者が代表権を有しない場合であっても、善意の第三者に対して責めに任ずるものとする。
(3) 個別規定の整備
(イ) 適用の排除
会社については、第260条第2項(取締役会の権限)、第260条ノ3(監査役の取締役会への出席、招集)、第261条(代表取締役)、第262条(表見代表取締役)、第266条、第266条ノ2、第269条、第273条、第274条第1項、第275条、第275条ノ3から第279条まで及び第280条第1項(以上、取締役および監査役)並びに商法特例法第14条第1項、第16条第2項、第18条から第18条の3まで、第18条の4第1項及び第19条第1項の規定は、適用しないものとする。
(ロ) 読替えによる適用
(a)「取締役」とある規定については、代表取締役を意味するものは「執行役」と、取締役全員をも意味するものは「取締役」に加えて「執行役」と読み替えて適用するものとする。
(b)「監査役」又は「監査役会」とある規定については、「監査委員会」と読み替えて適用するものとする。
(c)商法特例法において「各監査役」とある規定については、「監査委員会を組織する取締役」と読み替えて適用するものとする。
(コメント)
中間試案では、その他に、 計算書類の取締役会の承認(第281条第1項)は、会計監査人及び監査委員会による監査の後に受けるべきものとし、「執行役は、監査委員会から監査報告書を受領した場合には、遅滞なく、第281条第1項の承認を求めなければならない。」との規定を新たに設けた上で、18の(1)の(ロ)中「(1)の前段に規定するとき」とあるのは「第281条第1項の承認を得たとき」と読み替えるものとしています。
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