☆5.新株引受権の発行
☆この部分については、経済界からの強い要望を受けて、平成14年4月実施を目指します。
(1)新株引受権の発行の決議
(イ)会社は、新株引受権を発行することができるものとする(中間試案は、会社が新株引受権のみを単独で発行できるようにするものです)。
(ロ)(イ)の場合においては、下記事項で定款に定めがないものは、取締役会が定めるものとする。ただし、定款をもって株主総会が決定する旨を定めているときは、この限りでないものとする。
(a)新株引受権の総数
(b)各新株引受権の発行価額及び払込期日
(c)新株引受権の目的である株式の額面無額面の別、種類、数及び発行価額
(d)新株引受権を行使することができる期間
(e)新株引受権の行使についての条件
(f)新株引受権の行使によって発行すべき株式の発行価額中、資本に組み入れない額
(g)利益又は利息の配当については、(12)の(イ)の規定による払込みをした時の属する営業年度又はその前営業年度の終わりにおいて新株の発行があったものとみなすこと
(h)新株引受権を社債とともに発行する場合において新株引受権のみを譲り渡すことができないときは、その旨
(i)新株引受権を行使しようとする者の請求があるときは、その新株引受権とともに発行された社債の償還に代えてその社債の発行価額をもって(12)の(イ)の払込みがあったものとする旨
(ハ) (ロ)の(b)の発行価額は、公正なる価額でなければならないものとする。
(二) (ロ)の(b)の払込期日は、(ロ)の決議の日より3か月を経過した後の日とすることはできないものとする。
(2) 譲渡制限会社における決議要件
(イ) 株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨の定款の定めがある場合において、新株引受権を発行するときは、(1)の(ロ)(a)から(e)までに掲げる事項について、第343条に定める決議があることを要するものとする。
(ロ) 第280条ノ2第3項(議案の要領)及び第4項(決議の効力期限)の規定は、(イ)の場合に準用するものとする。
(3) 発行条件の均等
新株引受権の発行価額その他の発行の条件は、発行ごとに均等に定めなければならないものとする。
(4) 新株引受権の付与事項の公示
(イ) 会社は、新株引受権を発行するときは、(1)の(ロ)の(a)から(e)までに掲げる事項、新株引受権の発行価額の算定の基準及び募集の方法を公告し、又は株主に通知しなければならないものとする。
(ロ) 会社は、(イ)の公告又は通知の日から2週間を経過した後でなければ、新株引受権の割当てをすることができないものとする。
(5) 新株引受権の申込み
(イ) 新株引受権の申込みをしようとする者は、新株引受権申込証に引き受けるべき 新株引受権の数及び住所を記載し、署名しなければならないものとする。ただし、
(1)の(ロ)の(h)に掲げる事項の定めがある場合(非分離型)は、この限りでないものとする。
(ロ) 新株引受権申込証は、取締役が作り、左の事項を記載しなければならないものとする。
(a)会社の商号
(b)(1)の(ロ)の(a)から(e)までに掲げる事項
(c)株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨を定めたときは、その旨
(d)(7)の(イ)の払込みを取り扱うべき銀行又は信託会社及びその取扱いの場所
(e)(12)の(イ)の払込みを取り扱うべき銀行又は信託会社及びその取扱いの場所
(ハ) (1)の(ロ)の(h)に掲げる事項の定めがある場合(非分離型)においては、第301第1項の社債申込証に(1)の(ロ)の(h)及び(i)並びに(ロ)の(b)から(e)までに掲げる事項を記載しなければならないものとする。
(6) 新株引受権申込証作成義務の例外
(5)の規定は、契約により新株引受権の総数を引き受ける場合には適用しないものとする。
(7) 払込み等
(イ) 新株引受権の引受人は、払込期日に各新株引受権につき、その発行価額の全額の払込みをしなければならないものとする。
(ロ) 第177条第2項(株式の払い込み)、第178条(払い込み取扱期間の変更等)並びに第280条ノ9第2項(払い込み懈怠の効果)及び第3項(引受人に対する損害賠償請求)の規定は、(イ)の場合に準用するものとする。
(8) 新株引受権証券の発行と方式
(イ) 会社は、新株引受権の払込期日後、遅滞なく新株引受権証券を発行しなければならないものとする。ただし、(1)の(ロ)の(h)に掲げる事項の定めがある新株引受権(非分離型)については、新株引受権証券を発行することができないものとする。
(ロ) 新株引受権証券には左の事項及び番号を記載し、取締役が署名しなければならないものとする。
(a)新株引受権証券である旨の表示
(b)(1)の(ロ)の(c)から(e)まで及び(i)に掲げる事項
(c)(5)の(ロ)の(a)、(c)及び(e)に掲げる事項
(ハ) (1)の(ロ)の(h)に掲げる事項の定めがある場合(非分離型)においては、第30条第1項の債券(社債券)及び第317条の社債原簿に左の事項を記載しなければならないものとする。
(a)新株引受権付社債であること
(b)(1)の(ロ)の(c)から(e)まで及(i)に掲げる事項
(c)(5)の(ロ)の(c)及び(e)に掲げる事項
(9) 新株引受権の譲渡
(イ) 新株引受権を譲り渡すには、新株引受権証券を交付しなければならないものとする。
(ロ) 第205条第2項(占有者に対する適法所持人の規定)及び第230条(除権判決)並びに小切手法第21条(善意取得)の規定は、新株引受権証券に準用するものとする。
(10) 正当の理由に基づき特定の者に新株引受権を与える場合(ストック・オプションの場合)の特例(ストックオプション制度については、税制の整備が遅れており、現状では問題があります。)
(イ) 正当の理由(この条件があることにより、ストック・オプションの付与と既存株主との利益の調整が行われています。)に基づいて特定の者に新株引受権を与える場合においては、(1)の(ロ)の規定にかかわらず、(1)の(ロ)の(a)、(b)、(h)及び(i)に掲げる事項については、定めることができないものとする(すなわち、無償で行われることになります)。
(ロ) (イ)の場合においては、特定の者に与えるべき新株引受権の目的である株式の額面無額面の別、種類及び数について株主総会の決議がなければならないものとする。この場合においては、取締役は、新株引受権の行使の条件の概要、新株引受権の目的である株式の発行価額の決定方法その他の新株引受権の付与の方針及び特定の者に新株引受権を与えることを必要とする理由を開示しなければならないものとする。
(コメント)
ストック・オプションについて、現行の第280条ノ19第2項において、株主総会で付与する対象者の氏名等を決議すべきこととしていたことを不要として、付与方法を簡素化する代わりに、行使の条件等を開示すべきこととするものです。また、ストック・オプションの目的である株式の発行価額に代えてその決定方法を定めることとして、実務に対応することとしています。
(ハ) 株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨の定款の定めがある場合においては、(ロ)の決議は、第343条の規定によらなければすることができないものとする。
(二) (ロ)の決議は、決議後1年以内に新株引受権を与えるものについてのみ、その効力を有するものとする。
(ホ) (ロ)の決議がされた新株引受権は、譲り渡すことができないものとする。
(へ)第280条ノ2第3項(議案の要領)の規定は、(ロ)の場合に準用するものとする。
(ト) (1)の(ハ)及び(二)並びに2から9までの規定は、(イ)の場合には適用しないものとする。
(コメント)
中間試案では、新株引受権の発行についての一般規定を設けることとしたうえ、ストック・オプションとして付与される場合については特則を設けるという構成を採っています。
第一に、中間試案は、新株引受権付社債については、社債と新株引受権とを同時に発行するものと構成しています。また、両者を分離することができない(非分離型)の場合についてはその旨の決議をすべきこととしました。なお、現行の新株引受権付社債(第341条ノ8ないし第341条ノ18)に関する規定は、削除することとしています。
第二に、現行のストック・オプションについては、取締役にインセンティブ型の報酬として与えられる場合の報酬規制の問題と新株引受権の発行に関する規制の問題とに分けて規定を設けることとしました。
(11) 新株引受権の登記
(イ) 新株引受権を発行するときは、(7)の払い込みのあった日から、本店の所在地においては2週間、支店の所在地においては3週間内に新株引受権の登記をしなければならないものとする。
(ロ) (イ)の登記にあっては、下記事項を登記しなければならないものとする。
(a)新株引受権であること
(b)新株引受権の総数
(c)(1)の(ロ)の(c)から(e)までに掲げる事項
( ハ) (10)の(ロ)の決議ある新株引受権の場合においては、(イ)に定める期間は(10)の(ロ)の決議の日から起算するものとする。この場合においては、(ロ)の規定に関わらず、(10)の(ロ)の決議ある新株引受権であること並びにその新株引受権の目的である株式の額面無額面の別、種類及び数を登記しなければならないものとする。
(二) 第7条(変更の登記)及び第341条の4第4項(外国における転換社債の募集の場合の登記の期間)の規定は、(イ)の登記に準用するものとする。
(12) 新株引受権の行使
(イ) 新株引受権を行使するものは、請求書を会社に提出し、かつ、新株の発行価額の全額の払い込みをしなければならないものとする。請求書を提出する場合において、新株引受権証券を発行しているときは新株引受権証券を添付し、(1)の(ロ)の(h)に掲げる事項の定めがあるときは新株引受権とともに発行した社債にかかる債権を呈示しなければならないものとする。
(ロ) (イ)の払い込みは、会社が払い込みを取り扱うべきものとして定めた銀行または信託会社においてしなければならないものとする。
(ハ) 第175条第1項(株式の申込み)の規定は(イ)の請求書に、第178条(払い込み取扱機関の変更等)及び第189条(払い込み取扱機関の証明)の規定は(ロ)の払い込みを取り扱う銀行または信託会社に準用するものとする。
(13) 新株引受権を行使した者が株主となる時期
(12)の(イ)の規定により新株引受権を行使した者は、(12)の(イ)の払い込みの時に株主となるものとする。
(14) 自己株式の交付
(12)の(イ)の払い込みを受けた会社は、新株引受権の行使による新株の発行に代えて、その有する自己の株式を新株の引受権を行使した者に移転することができるものとする。
(15) 転換株式等の規定の準用
(イ) 第222条の2第3項(株式の数の留保)の規定は、新株引受権の場合に準用するものとする。
(ロ) 第280条の10(新株発行の差し止め)及び第280条の11(不公正な価額で株式を引き受けた者の責任)の規定は、新株引受権の発行の場合に準用するものとする。
(ハ) 第208条(質権の効力)、第222条の7及び第341条の6(転換により発行された株式の議決権)の規定は、新株引受権の行使があった場合に準用するものとする。
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