第六回 その他(会社分割)

 その他、会社分割について商法改正を行ったこと以外に商法および他の法律を改正したものは次のとおりです。なお、「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」は最後に別項で取り上げます。



1.
簡易な営業の譲受け(第245条ノ5)

(1)会社が他の会社の営業の全部の譲受けをする場合、その対価が最終の貸借対照表により会社に現存する純資産額の1/20を超えないときは、会社においては、第245条第1項の決議によることを要しません(第1項)。
(2)(1)の場合、会社は、営業の全部の譲受けを約した日から2週間以内に、相手方である会社の商号および本店ならびに第245条第1項の決議によらないで営業の全部の譲受けをする旨およびその要領を公告し、または株主に通知しなければなりません(第2項)。
(3)(2)の規定による公告又は通知の日から2週間以内に会社に対し書面をもって営業の全部の譲受けに反対の意思を通知した株主は、会社に対して、自己の有する株式を他の会社の営業の全部の譲受けに係る契約がなければその有すべき公正な価格をもって買い取るべき旨を請求することができます(第3項)。
(4)(3)の請求は、(3)の期間の満了の日から20日以内に株式の額面無額面の別、種類および数を記載した書面を提出しなければなりません(第4項)。
(5)第245条ノ3第2項から第5項まで(買取請求の手続)および第245条ノ4(買取請求の失効)の規定は、(3)の場合に準用します(第5項)。
(6)会社の発行済み株式の総数の1/6以上に当たる株式を有する株主が(3)の規定による反対の意思の通知をしたときは、ここで定めた手続による営業の全部の譲受けをすることができません(第6項)。



2.
子会社の計算による利益の供与の禁止

(1)会社は、何人に対しても、株主の権利の行使に関し、会社またはその子会社の計算において財産上の利益を供与することができません(第294条ノ2)。
(2)取締役等は、株主の権利の行使に関し、会社またはその子会社の計算において財産上の利益を人に供与したときは、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処します(第497条)。



3.
規定の整備

 所要の規定を整備します〔第210条(自己株式の取得・質受の制限)、第210条ノ2第4項(自己株式譲渡型ストックオプションと新株引受権型ストックオプション)、第211条ノ2(子会社による親会社株式の取得制限)、第212条(資本減少・定款の規定に基づく株式の消却)、第222条(数種の株式)、第230条ノ4(端株主の法定の権利)、第230条ノ9(発行済株式総数の計算と端株)、第280条ノ19(新株引受権型ストックオプションと自己株式譲渡型ストックオプションとの併用で認める)、第346条(ある種類の株主の総会)、第398条(管理命令)〕。



4.
過料に関する規定の整備

過料について、所要の規定を整備します(第498条第1項第6号、第19号、第20号)。



5.
有限会社法の一部改正(以下、条文は有限会社法のものです。)
(1)有限会社が有限会社を設立する新設分割(第63条ノ2)   
1)有限会社は、その営業の全部または一部を設立する有限会社に承継させるため、新設分割をすることができます(第1項)。   
2)有限会社が 1)の規定により分割をするには、第48条に定める決議がなければなりません(第2項)。
(2)株式会社が有限会社を設立する新設分割(第63条ノ3)   
1)株式会社は、有限会社を分割によって設立する会社とする新設分割をすることができます(第1項)。   
2) 1)の場合、分割株式会社に関しては商法の規定に従います。但し、人的分割の場合、新設会社である有限会社が分割会社である株式会社の株主に対して出資の割当てをするときは、その株式会社における承認の決議は、商法第348条第1項の規定(第二回の4)によらなければなりません(第2項)。   
3)分割をする株式会社が社債の償還を完了していないときは、分割によって設立する有限会社にその社債を承継させることはできません(第3項)。
(3)有限会社の吸収分割(第63条ノ7)   
1)有限会社と他の有限会社または株式会社は、その一方の営業の全部または一部を他方に承継させるため吸収分割をすることができます(第1項)。   
2) 1)の場合、分割する株式会社または承継する株式会社に関しては商法の規定に従わなければなりません。但し、承継する有限会社が分割する株式会社の株主に対して出資の割当てをするときは、その株式会社における承認の決議は、商法第348条第1項の規定−本文の説明によらなければすることができません(第2項)。   
3)第63条ノ2第2項〔第四回の1−(2)〕の規定は、1)の場合に準用します(第3項)。   
4)分割する株式会社が社債の償還を完了していない場合、承継する有限会社にその社債を承継させることはできません(第4項)。
(4)その他     
1)規定の整備     所要の規定を整備しています〔第46条(計算に関する準用規定)、第63条ノ4、第63条ノ5、第63条ノ6,第63条ノ8、第63条ノ9〕。     
2)過料に関する規定の整備     過料について、所要の規定を整備しています(第85条第1項第10号、第11号、第12号第13号、第15号、第2項)。4.の決議をすべき株主総会については、その会社の定款にその定めがある旨を3.の通知に記載しなければなりません。



6.
株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部改正(以下、条文は特例法のものです。)

株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律について、所要の整備をしています(第3条、第13条、第25条)。



7.
新株の発行に代わる自己株式の移転(第374条ノ19)

承継会社は、分割に際してする新株の発行に代えて、その有する自己の株式で211条(自己株式の処分)の規定により相当の期間に処分をすることを要するものを分割会社(物的分割の場合)またはその株主(人的分割の場合)に移転することができます。この場合においては、移転すべき株式の総数、額面無額面の別、種類および数を分割契約書に記載しなければなりません。



8.
債権者保護手続(第374条ノ20)

(1) 各会社(分割会社または承継会社)は、承認の決議の日から2週間以内に、その債権者に対し、分割に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を官報をもって公告し、かつ判明している債権者には、各別にこれを催告しなければなりません。承継会社がその広告を官報のほか公告をする方法として定款に定めた時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲げてするときは、その会社においては、その催告をすることを要しません(第1項)。
(2) なお、債権者の異議手続については、合併についての第100条第1項後段、第2項および第3項(債権者の異議)、並びに第376条第3項(資本減少の場合の社債権者の異議)の各規定が準用されます(第2項)。



 

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